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最終話

この物語はフィクションです。

私が好きになった物語は後半で急転換を向かえアッサリと終わってしまうものが多い。


時間の経つ早さというものは感じるものが活発に活動するほど遅く感じ、何もせずにいるものほど早く感じるらしい。そんなわけでぐうたらな生活していた私の時間が経つ速度はジェット機のように早く、死神に与えられた1ヶ月間も終わり約束の時間まで、あと1時間になった。30日間が何もしないままに過ぎてしまった。例の兎との生活も何事もなく過ぎた(まぁ、毎回のように私の入浴を覗く兎との格闘を無視した場合ではあるが…)。

 過去には1度行ってみたのだが、死神が軽く「制限はあるものの」って言っていた制限が[3日前までにしか戻れない]と…もう、全く無意味なタイムスリップにしかならないのだ…。案の定、私はその能力で3日前に戻ってみたけど何も見つけられなかった。


 ところで、私は気分転換にと散歩している途中なのだが先程、気になる人を見つけて、その人を見物している。中年の黒い背広のおじさん。私が死神と出会った橋の上にいるおじさん。橋の手摺りを乗り越えようとするおじさん。走り出す私、おじさんを大声で呼び止める私。

「ちょっと!何してるんですか!」

驚いて振り返るおじさん。「えっ…」

ドスンッ

乗り越えようとした手摺りから橋の方にダサく背中から落ちたおじさん。

「いたた…」

「大丈夫ですか?」

「あぁ…すまなかった」

「いや、別に。なんであんなことを?」

「…今朝、妻と娘が死んだんだ。だから、自分も…と思ってね」

「…」

「…」

沈黙…気まずい…

「ど…どうして死んでしまったんですか?」

「交通事故だよ…自宅を出てすぐの交差点で信号無視の車にはねられたんだ…それで会社に電話かかってきて…僕が病院に着いた時にはもう…」

「住所は…?住所はどこですか?その交差点ってどこですか?」

「え?」

私の物語は最後にやってきたようだ…

 

 私はその日の朝にやってきた。よくいろんな漫画やアニメでは過去は変えてはいけないことになっているけど、そんなことは知ったことではない。本当にいけないのなら神様は私にこんなチャンスを与えないだろう。まぁ、神は神でも死神なんだけど…神に違いはないだろう。

 そんなことを考えているとおじさんに聞いた住所に着いた。約5分後にあの家から出てくるおじさんのお嫁さんと娘さんをちょっと足止めすればいいんだ。


  5分後


ガチャッ

家のドアが開いた。出てくるお嫁さんと娘さん。走り出す私。

 ズサーッ

2人を足止めに行こうとして走ったが2人の前で激しく転んでしまった…痛い。

「大丈夫〜?」

娘さんが心配してくれる。

立ち上がる私。

「だ…大丈夫!ありがとうね。心配してくれて」

痛さを我慢して笑顔で答える私。しかし、本気で痛かいから多分笑顔がひきつってるだろう…。

「じゃ、じゃーね!車に気をつけてね!」

走って逃げる私。結果的に時間稼ぎできたし…これでいいだろう。

 少しした所…あの橋の上まで言った所でずっとそばにいて私にしか見えないからと言って私が転んだのを見て爆笑しやがった兎が話しかけてきた

「お嬢さん、そろそろ時間ですよ。転んでいる場合ではありません。あなたで30日間でちゃんと答えを出せたのかは知りませんがそろそろ現実時間に戻りますよ」

最後まで腹の立つ兎だ。

「わかった。帰ろう。」

「では。」

兎が指をパチンと鳴らす。辺りが急に朝から夕方の色に変わる。元の時間に戻ってきた。

「あと3分で時間です。せいぜい最後の時間を楽しんでください。まぁ、納得させれれば最後ではないですが…」

私は無言でうなずく。

そして、橋の手摺りに手をかけて遠くに見える景色を眺める。キレイだな…。


 「今日の朝ね〜家の前で知らないお姉ちゃんが転んだんだよ〜」

背後からそんな声が聞こえて振り返る。あのおじさんとお嫁さん、娘さんが幸せそうに並んで歩いて行く。

事故は起きなかったようだ。事故が起きなかったということは私とおじさんは出会わなかったことになるのだろう。でも、出会わなかったらお嫁さんと娘さんは死んでいたはずなのに…。でも、そんな矛盾はどうでもいい。あの幸せな家族は今、存在するんだから。

 ふと、不思議に死神の質問への解答が頭に浮かんだ


 「あなたの生きている理由はなんですか?」

隣にはいつの間にか夜鬼がいた。向かい合う夜鬼と私。1呼吸して私は答える。


「私が生きている理由を探すためかな」


見つめ合う夜鬼と私。

笑みをもらす夜鬼。

「解りました。うん、ありがとうございました。ではお元気で。また、機会があればお会いしましょう。」

どうやら合格のようだ。しかし、

「死神になんてもう会いたくないね」

「フフフ…そうですね。さようなら」


また出会った時のように一瞬で姿を消す夜鬼。

「では、さようなら。お嬢さん。30日間、わりと楽しいものでしたよ」

続けて姿を消す兎。


明日からどんな生活が始まるのだろうか…。いや、多分、いままでと何も変わらない生活がまた始まるんだろう。でも、私の心だけは変わっていく。

「生きている理由を探すために。」

私は家に帰ろうとしたのにまた、学校に向かってしまった。認めようじゃないか。私は天然ボケだと。




そして、死神の彼は明日もどこかで誰かに問い掛けているかもしれない。

「あなたは何故、生きているんですか?」、と。

最後までお付き合いくたさりありがとうございました。

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