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第3話

小さい頃には、お伽話みたいにヌイグルミや動物が動いたり、喋ったりできればいい、そんなことを思っていた。成長するにつれ、そんな事を思うのは恥ずかしい事だという周囲の目に流され、いつの間にかそんな思いは私の中から消えていた、忘れてしまっていた。


でも、私はそんな思いを思い出した。思い出さずにはいられなかった。なぜならば先程、死神の夜鬼から受け取った笛を吹いたところ直立しているタキシード姿のスマートな兎が現れたうえにソイツが喋るという異常な事が起こったからだ。


まぁ、初めは驚いたけども落ち着いたところで奇妙な兎との会話を試みようというところなのだ。

「やっと落ち着きましたね。お嬢さん。改めましてコンバンワ。私の名前はエル。お嬢さんは私のことを兎呼ばわりしていますが、私はインプです。お嬢さん、お名前は?」

「八重、中川八重…」

ニッコリとして会話を進める兎…エル。

「八重さん。いい名前ですね。おしとやかそうで。まぁ、先程のあなたの驚き方を見るとおしとやかとは…言いにくいですが。」

「なッ!?それはあんたがいきなりでてきて喋ったりするからでしょう!」

「いきなり出てきてって、お嬢さんが笛を吹いたから出てきたんですがね。あぁ、そうだ。忘れるところでした。いや、正確には忘れてました。思いだしましたよ。私達インプの仕事は死神達の仕事を手伝うことです。手伝う内容は、笛を渡された人間がそれを吹いたときに出てきて、その人間の質問に答えたり、過去に連れて行ったりすることです。お嬢さんの用事はなんですか?」

「え…」

とりあえず吹いただけなのだがどうしよう…正直に言うべきか質問を今考えるか…質問を考えよう。


  2分経過



「もしもし、お嬢さん?用事はなんでしょうか」

「え…っと、じゃあ、生きている理由って何?」

「あ…あははは!お嬢さん、その質問は無意味ですよ。それは一人一人違うものでしょう。私の理由を知ったところでどうにもなりません。それに他人の理由を死神に言ったところで納得してもらえることは無いと思いますがね」

「……。」

この兎、なんか嫌いだな。とりあえず、消えてくれないかな…。

「わかった。わかったからまた用事できたら呼ぶから消えてくれないかな?」

なんだか驚いた表情をする兎。

「あれ、死神から聞いてませんか?私達インプは呼び出した人間が死ぬか死神を納得させるかしない限りこの世界から戻れないんですが…」

あぁ…なんだか突然頭が痛くなってきた…。


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