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54 魔女と赤いお祭り衣装の女の子

 仕度を終えて、一人控えていた。


 部屋にはたくさんの暖かな陽が、差し込んでいる。

 椅子に腰掛けながら、ぼんやりと日の光を眺めていた。


 あたたかさに、ささくれ立った心も落ち着きをいくらか取り戻している。


 光に遊ぶこまかな塵を、ただ目で追っていた。


 窓の外に広がる木々の葉が、赤く黄色く色づいている様も眺めた。

 陽射しを浴びて、艶やかに輝く赤茶色。

 その色合いに何故だか、もう二度と構わないで欲しいと願う人の面影が浮かんで、苦しくなった。


 窓の向こうから視線を引き剥がし、頭を振った。


 しっかりしなくてはいけない。


 これから、私は、大事な役目を果たさねばならないのだから。


 今日は森の神様のことだけを考えて、感謝を捧げる日。


 そっと両手を組んで祈りの形にし、唱えるべき感謝の言葉をそらんじてみる。


 ・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・


『----、----、------』


 大丈夫だ。


 少し前まで、むつかしいと感じていた部分も、忘れていない。



 ふと目の前の鏡の中の自分と目が合った。


 真っ白の衣装に、お揃いのベール。


 ふちは金と銀とで飾られた、上品でありながらも、きらびやかな衣装だった。


 私の色とはあまりにも対極にある色彩をまとって、嫌でも黒い髪と瞳が目立つ。


 カラス、娘――。


 急に何もかもがやるせなくなって、俯く。


 ・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・


 ふいに冷たい風が頬を撫でた。


 振り返ると、小さく扉が開いていた。


 隙間から、好奇心で溢れた瞳が覗いていた。


 にこにこしながら、小さな手を差し込む。

 そのまま、私を見詰めたまま、幼い女の子は身を滑り込ませてきた。


 金の髪にも光が降り注いでいる。

 眩しいほどだった。



 お祭りの装束なのだろう。


 深くも鮮やかな赤いスカートに、木の実が刺繍された上着にお揃いの額当てをしている。


 大変に可愛らしい。


「どうしたの? ええと、どこの家の子だったかな?」


 記憶をさらってみたが、やはり思い出せなかった。


 女の子はにこにこしている。

 深い緑の眼差しは、雨に濡れた森の木々のようだ。


 どこか懐かしさを湛えた色に、つられて微笑み返す。


 女の子も、より一層笑みを深めた。


 ふっくらとした頬に浮かぶえくぼが可愛らしい。

 何の警戒心も持っていないのは明らかで、やはり、村の手伝いの時に一緒だったのかもしれないと思い直した。


「なあに? どうかした?」


 女の子は私の両手をすくい上げて、ぎゅっと握った。


「え?」


 屈むようにと手招きで促がされ、少し背を丸める。


『今日は祝福があるからね。何にも心配いらないよ、- - - - 』


「!?」


 耳元で囁きこまれた言葉は、古語だった。


 しかも完璧な発音。


 それより何より驚いたのは、この子が私の真名を呼んだからだ。


 言葉が出てこなかった。

 ただ、涙が溢れた。

 懐かしくて温かい、安堵のために零れ落ちた証の涙。


 それを見届けると、女の子は手を放し、すり抜けるように戸口へと向った。



『待って! どうして』


 くすくす笑いながら、その子は扉の向こうに駆けて行ってしまう。


 捕まえなくちゃ!


 待って、行かないで!


 あなたは……?


 あなたは誰?


 目線だけで縋りつくように、追いかけると、女の子は唇に人差し指を当てて見せた。


 大慌てで杖を引き寄せ、扉を開け放つ。


 ・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・



 確かにぱたぱたという軽やかな足音がしたはずなのだが、見渡す限り女の子の姿はどこにも見えなかった。


 ただ陽射しだけが、暖かく溢れていた。


『日の射しこむ部屋で。』


何となく、陽射しやら木漏れ日やらのシーンをよく書いてしまう気がします。


(作者比。)


だから、何だっていうのか。


さて。


この子は……。


盆踊りとかって、亡くなったご先祖様も混じっているっていうよね!


ぶるぶる。何の話だ。


お祭りも、人外の者が混じって参加してますよ~魔女っこ。



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