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23 魔女と地主とその身内

 

 正門が見えた所で人影も見えた。


 ・。:*:・。・:*:・。・:*:。・。:*:・。・


「お帰りなさい!」


 いち早く、リディアンナの大きな声に迎えられた。


「姪のリディアンナだ」


 抱えていたカルヴィナに説明するように話し掛けると、小さく頷いたようだった。


「リディはおまえに会うのを楽しみに待っていた」

「え?」


 カルヴィナが驚いたように声を上げ、俺を見上げた。

 それは本当なのかと問いたげに見つめられる。

 もしくは何故、自分に会いたいのかと尋ねたそうにも見えた。

 どちらにせよ、少しだけ尻込みしているのが伝わる。

 恥ずかしさもあるのかもしれないし、スレンや姉の様子から何かを予想しての事かもしれない。


「ああ。リディアンナは優しい子だ。きっとおまえとも話が合う」

「リディアンナさま」


 安心させるように言ってやると、カルヴィナはその名を丁寧に呼ばわった。

 その声は近くでなければ、聞こえる大きさでは無かった。

 だが、リディには伝わったらしい。


 手を大きく振って、嬉しそうに笑顔を見せている。


 馬を近づけると腕組する姉から睨まれたが、無視してやり過ごし馬から下りた。

 すぐにカルヴィナも下ろしてやる。

 馬からは下ろしてやったが、地面には下ろしてやらない。

 そのまま再び彼女を抱き上げる。


「お帰りなさいませ、レオナル様」

「ああ。世話を掛けたな。馬を頼む」


 命じられるよりも早く、リヒャエルは既に馬の手綱を持っていた。

 そのまま軽く一礼して見せ、馬屋へと歩き出した。


 カルヴィナを抱え直し、駆け寄ってくるリディ達へと向った。


「一人で歩きます」

「杖が無いだろう」


 小さく抵抗したカルヴィナに、すかさずそう返す。

 そこでやっと、自分を支える杖がない事に気がついたらしい。

 慌てて辺りを見渡し始めたが、もう遅い。


 杖は渡し忘れたふりをして、他の荷と一緒のまま馬の背だ。

 馬は既にリヒャエルに預け済みだ。


 カルヴィナの困惑が伝わってくる。

「一人で……。」

 言い掛けて、カルヴィナは口を(つぐ)んだ。

 杖が無ければ、彼女は長くは立っていられないのだ。

 いくら口で「歩く」等と訴えても、それは虚勢にしかならないだろう。


「動かれると危ないから、ちゃんと摑まっていろ」


 そうたたみ掛ける。

 このまま大人しく運ばれているしかないと諦めたのか、おずおずと肩に手を置かれた。


 ・。:*:・。・:*:・。・:*:。・。:*:・。・


「やあ、やっとのお姫様の到着だ。待ちくたびれたよ」


 スレンがぼやく。


「おまえはまだ居たのか」


 ぼやき返しながら、スレンに背を見せるようにする。


「じゃあ、レオナルが王子? というよりもいかにも(さら)ってきましたという風情は拭いきれないわね」

「お母様ったら」


 嫌味を言いながらも、姉は安心した様子で笑みを浮べている。


「お帰りなさい、カルヴィナ」

「お帰りなさい、叔父様。はじめまして、カルヴィナ。リディアンナよ!」


「……ジルナ様。リディアンナ様。カルヴィナでございます」


 両方から両手を開いて囲まれ、カルヴィナは恐縮しきった様子で頭を下げた。

 その拍子にショールが滑り落ちてしまった。

 カルヴィナの両手は俺の肩にあるのだから当然だ。


「カルヴィナ、その髪っ!?」


 姉が悲鳴を上げた。そうして、その場でわっと泣き出した。

 リディアンナは再び母の取り乱した様子に慌てて宥めだす。


「お母様、どうなさったの?」

「ジルナ様。ええと、あの。申しわけありません」


 カルヴィナも姉の嘆きぶりに困惑している。

 まさかここまで泣かれるとは思いもしなかったろう。

 出来ていたら、切らずにいてくれただろうか。

 だが、何もかも遅かった。

 カルヴィナの髪は今や肩に届くか、届かないかといった辺りで揺れている。


「レオナル! 早くカルヴィナを部屋に案内しなさい! それから表に出なさい!」


 予想通りの展開だ。心構えはしていた。


 ・。:*:・。・:*:・。・:*:。・。:*:・。・


 姉に命じられた通りに、カルヴィナを客間へと落ち着けた。


「カルヴィナ、レオナルにはもう一発お見舞いしておきましょうか?」

「め、滅相もございません!」


 尋ねるよりも早く拳を構えて見せた姉に、カルヴィナが首を横に振った。

 いきり立つ姉をリディとカルヴィナが取り成し、俺もどうにか腰を落ち着ける事が許された。

 ただし、カルヴィナからは遥かに離された、隅にいるようにと命じられたが。

 大人しく従う。


「出て行っちゃ、嫌よ」

「……はい」

「すごく心配したんだから」

「申しわけありませんでした」


「カルヴィナは行動力があるのね。叔父様も驚いたと思うわ!」

「リディアンナ様」

「でも二度としないでね。危ないから」

「申しわけありません」

「約束よ」


 かしましく、しきりに二人からどれだけ皆が心配したかと延々と告げられ、カルヴィナはただただ恐縮しきっている。


 時折り、こちらを気使ってか見てくる。


「レオナルが悪い」

「レオナルの言葉が足りなかった」

「レオナルの言葉が余計だった」

「叔父様がイジワルだった」

「叔父様が説明不足だった」

「叔父様が勝手だった」


 ―――等など、俺に唇という鉾先(ほこさき)が向う度にカルヴィナがそっとこちらを窺う。

 それに加えて、この状況をどうしたものか答えをくれ、と懇願されているようにも見えた。

 残念ながら、それは彼女らの気が済むまで解放ならないと答えるしかない。

 実際声に出して尋ねられたワケではないから、答えようがないが。

 恐らくどんな怒りの説教よりも堪える事だろう。

 少なくとも俺はそう感じている。


 目が合うたび黙ったまま頷いて見せると、カルヴィナも微かに頷くように見える。


 その様子を眺めながら、カルヴィナの部屋を二階に移そうと考えていた。


 杖も取上げたままにしておこうかとも考える。


「毎度の事ながら、女のハナシってのは長いねぇ」

「おまえも長居しすぎだろう、スレン」


 ぼやくスレンには確かに同感だが、そこは黙っていた。


『前回の前書きの次回に~。は、どこ行った!?』


長くなったので、切り上げました。


今度こそ次回に~!


連続レオナル目線にぐったりきている作者です。


華やかさプリーズ。& カモーン。


お付き合いありがとうございます。


次 回 も レ オ ナ ル タ ー ン に な り そ う で す 。


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