旅の目的
魔女見習いは英雄の腕に広がる変色を見つめ、指先でその縁をなぞった。
「こっちもこっちね……。傷そのものは塞がれるのに、この色のついたところだけが弾かれる。……私の手には負えないって言われているみたいで、癪だわ」
腕だけでなく、傍らに立てかけられた剣もまた、同じく淀んだ色を帯びたままだ。英雄はそれを他人事のように眺め、空いた手で頭を掻いた。
「しょうがないよ。こればっかりは、そういう性質のものなんだろう。光の巫女に見せたら、なんとかならないかなぁ」
深刻な様子もなく、英雄はあっけらかんと提案する。魔女見習いはその無頓着さが気に入らないのか、彼の腕を少しだけ強く掴んだ。
「私がなんとかしてあげたいの。……いえ、私がなんとかしてみせるわ。どんなに時間がかかったとしてもね」
その言葉に含まれた熱量に、英雄は困ったように、けれど隠しきれない親愛を込めて笑った。
「そいつは心強い。……まあ、新しい旅の目的ができたってことで。そう悪くないんじゃないかな」
「……旅の目的。よくそんな風に言えるわね」
「目的は多いほうがいい。とりあえず、目の診察のこともあるし、お光っちゃんのとこにでも行きますか」
英雄はそう言うと、重い剣を肩に担ぎ、いつものように歩き出す。
魔女見習いはその後ろ姿を追いかけながら、呆れと、そして確かな愛着を込めて吐息をついた。
「……本当、そういうところよね。……待ちなさいよ」




