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クマ五郎

 腑に落ちないままマンションに入る。オートロックを一緒に入ろうとしてくる人間はいない。とりあえずは大丈夫か。


「あ~アイスでも、いや、ゲームだゲーム」


 今取り組まないと忘れて明日が来る。何のゲームをしているのか聞いたから、明日にでもゲームしようとか言われるかもしれない。俺はママさんからの荷物を漁った。


「あった」


 ゲームがすぐに見つかった。ソフト用のケースに仕舞われていたので分かりやすかった。


 コロン。


「おっと」


 ベッドを背もたれにして体重をかけたら、端に置いていたクマ五郎が落ちてきた。せっかくなので、俺の横に置く。


「クマ五郎も見てて」


 まず始めに通知機能をオフにする。これ大事。そして、ソフトを入れて起動。おお、出来た。これでもうマスターした気分。


「よし、まずは一人モードね」


 スマホでなんとなくのやり方は覚えた。あとは実践あるのみ。オフラインモードで銃の命中率を上げていく。


「ムズッ」


 シューティングだから単純ゲームかと思ったけど、標的が動き回るし攻撃してくるからかなり難しい。この敵が実際の人間が操作するキャラになるんだろ? 無理過ぎる。


「うおッあ、あ~!」


 あと一発で仕留められそうだったのに逃げられた。逃げるって何。敵なら最後まで戦ってくれ。


 時間制限あるのがまた難しい。時間来たら逃げられちゃう。これも、対戦時の時間を意識しろってことなのだろう。無理。


 結局、夕食の時間まで没頭してなんとか形になった。これで、始めて初日のド素人とは思われない。多分。


 参考に実況配信も観たりしたけど、配信している年代の幅に驚かされた。


「これ、小学生もやってんの? 小学生でこんな上手いの? というか、小学生で配信できるとか何者だよ」


 俺なんか配信の仕方分からないから、全部社長やスタッフの人に任せきりだった。これも親が全部やってるのかもしれないけど、十歳やそこらで実況できる語彙力持ってるのは純粋に尊敬する。


 冷蔵庫で適当に食材を漁って腹を満たし、念のためまた一時間やってから通知をオンにした。すぐに高野がゲームをやっている通知がくる。一緒にフレンド対戦しないかという連絡がこないかドキドキしたが、この日は何の連絡も無かった。そもそも、史郎のスマホをもらった日から放置していて充電が切れていた。


「やッッッべ」


 すぐに充電を始める。ママさんから心配の連絡が何件か着ていた。以上。


 史郎、高野以外に友だちいないんだな……。


 充電が切れていたことと、毎日問題無く過ごしていることを返信しておく。一分で可愛らしいスタンプが返ってきた。ママさん暇なんかな。


「クマ五郎、史郎のママさん元気そうだ。よかったな」


 返事はもちろん無い。


 今までぬいぐるみの類がいなくて急に同居人が増えたから、思わず話しかけてしまった。まあいいか。一人だし。一人だから何したって咎める奴はいない。


 これなら史郎のスマホは多少放置していても平気そう。といっても、俺の方も社長以外には連絡取れないけど。


「あ、宿題出てたんだっけ」


 真面目な史郎はちゃんとやるはず。教科書を開く。全然分からなかった。


「二年前のことだから全然分からねぇ……どうやって高校生活乗り切ったんだっけ」


 そもそも、史郎の学校は俺が通っていたところより偏差値が高いのかもしれない。不良とかいるけど。まあ、進学校でもなければ不良の一人や十人くらいいるか。ギャル美もいるし。あんな感じならギャル美はきっと俺と同じくらいだろう。


「とりあえず、今のところは不登校気味だったから成績悪くても怪しまれないけど、どうにか留年は避けたい」


 留年したら申し訳ないのと、俺が勉強ばかりの高校生活に耐えられなくなるかもしれない。さすがに退学になったらママさんたちに会わせる顔が無い。


「俺だって、第二の人生も充実させたいから頑張らないとな」


 出席して宿題やっておけば、どうにかなるだろう。いや、赤点取ると留年なんだっけ。俺が言ってたところは部活頑張ってテストは名前書ければよかったから、通常の高校がどうなのかいまいち分からない。


「英語と、数学か。うわ、古典も出てる。古典なんて何も記憶に無いぞ」


 英語はインタビューで聞かれるからって社長にうるさく言われて日常会話ギリギリならいける。けど、それ以外の教科は体育以外壊滅的だった。進級、出来るかなぁ。


「クマ五郎、俺を応援してくれ。頼む」


 クマ五郎をベッドの上に置いて、神社みたいに柏手を打つ。本当によろしく頼みます。


 まずは英語をちゃちゃっと終わらせて、他の二教科は教科書と睨み合ってこれだろうという答えを埋めた。合っているかなんて知らない。答えを埋めたことが重要だから。


「もうこんな時間か。さて、風呂入って寝よう」


 時計を見たら二十二時だった。健康のため、試合でもない限り俺は二十三時までには絶対寝ると決めている。さっさとシャワーを浴びてベッドに転がる。クマ五郎も横に置く。


 なんとなく、こいつが応援してくれているように見えるので、段々愛着が湧いてきた。癒しが良いってことが分かったし、ペットでも飼おうかな。


「ペットかぁ家を留守にすることが多くて買えなかったけど、今ならいける。やっぱ犬か、小動物もいいな」


 時間が来たので検索は明日にする。おやすみ俺。おやすみクマ五郎。

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