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4.レベル上げからは逃げられない

 透明のおつゆに、大根、卵にちくわに、こんにゃく、それらの具材を土鍋にまとめてぐつぐつ煮立つ音を聞いていれば、長く感じるロード時間も何のその。


 いや、おでんに夢中になりすぎて、肝心のゲームの方が放置されても、リアルタイムで動かないゲームは正直助かる。


 では最後にウインナーと巾着を入れておいて、スープが透明なうちにおいしく頂こう。


 おでんに合わせるなら日本酒か? それもまたいい。


 からしをちょいと乗せて頬張ると、心が温まるホッコリという音が聞こえた気がした。


 ではいろいろ温まったところで、ゲームを始めよう。


 コミューンの中にはパークという場所がある。


 そのものずばり公園なわけだが、そこにはファームコミュバトルエリアなる施設があり、そこでNPCとAペットバトルができるらしい。


 外のフィールドでバグ相手にBコア稼ぎがてら経験値を稼ぐのもいいが、こちらで戦う方が稼げる経験値効率はいいとのこと。


 経験値を稼ぐのは正義と私は公園デビューをしてみることにした。


 バトルエリアに直行。対戦相手を待っていると記念すべき最初の相手はすぐにやって来た。


「おや? 君、Aペットクリエイター? いいね! じゃあ勝負だ!」


「!」


 戦いは何も生まない! なんて私は言わない!


 目があったらバトル! さぁ掛かってこいと手招きさえしてしまう私はすでに一端のAペットクリエイターだ。


 さぁ野良AI、貴様の作ったAペットを見せてみるがいい!


 出来れば今後の参考にしてくれるわ!


 私のクレソンはまだ初期技のみ! こんな情けない状態でもう一個上のステージになど立てるわけがない!


 私はクレソンと共にクリエイターの群れに突っ込んでゆく。


 さぁただスラッシュで殴る作業を始めよう。


 だがこのパークでの戦闘は、ある意味バランスブレーカー。


 戦おうと思えばいくらでも戦い続けることが出来る無間地獄だと知ったのは、この後の事である。


「……ファームコミューンにクリエイター少ないとか嘘ジャン!」


「ううーん。ま、負けないぞ! でも今日のところは許してやるぞ!」


 タッタカターと負けセリフを残して去るクリエイターのトム氏を見送った私は、もう何度目かのレベルアップのファンファーレを聞いて、クレソンのステータスを確認した。


「全然終わんない……もうやめよう。そのうち攻略する」


 まぁそんなにめちゃくちゃやったわけではないが、飽きるくらいにやるとちょっと心に罅が入った。


 でも成果は戦った分だけ得られているので、メンタルはちょっと回復した。


 レベルアップで上がる数値は、すべてのパラメーターが一律のようだ。


 そこに別枠の努力ポイントを自分で振り分けて、機体の特色を出せるのだとか。


 よくわからないので、こっちは気が向いたらやってみよう。


 そしてもう一つ、経験値と同時に剣を使用することで上昇したスキルポイントで技を習得した。


 ダブルエッジ。


 2回斬りつける。少し威力低めの攻撃技らしい。


 何で威力が低くなる? いやまぁ適当な敵に使ってみるか。


 私は技を試すためにバグを探してうろつくと、空中にノイズが走ってバグが出てきた。


 あ、今度のバグはキャタピラ履いてるー。


 ならばここはダブルエッジである。


 クレソンは腰を落として、低い姿勢で飛び出した。


 そして目にも止まらない腕の振りでの二連撃。ダメージ判定は二つでた。


 ああなるほど。1ターンに2回ダメージが乗るから、威力控えめなわけだ。


 「何かエフェクトがスピーディでいいな。それに二階攻撃というのがまたいい」


 これは中々の技を手に入れてしまった。


 私は町に戻ると、道を高速で動き回るなんだか微妙に邪魔な人に、きまぐれに話しかけた。


「悪いな! 今トレーニングしてるんだ! 僕はクリエイターでね。そろそろ、ファームエリアの限定解除試験に挑もうと思ってるんだよ! え? 僕が鍛えても意味ないって? そんなことないさ! Aペットもクリエイターも健全な精神は健全な肉体に宿るものだよ!」


 限定解除試験ってのはなんだろう?


 私は重要っぽいワードを調べるために町をもう少し探索する。


 そしてそこで、Aペットを連れた女の子からこんな話を聞いた。


「ファームコミューンの限定解除試験官はサファイアっていうの。彼女をバトルで倒すことが出来れば限定解除で、Aペットを2体持つことを許可されるわ。でも気を付けて。一つのエリアで受けられる試験は一つまで。最後まで制限を解除するにはいろんなコミューンを巡らないといけないの」


 重要情報ゲットっぽい。


 ならばその最初の試練とやら、そろそろいけてしまえるのではないだろうか?


 しかしダイアと名乗った、案内役は美女だった。


 サファイアも美女かもしれない。


 アレを倒すのか……私的にはそれが問題だなぁ。でもやる。サファイアさん会いたいし。


 私は気合を入れてショップに急いだ。


 腕馴らしの対戦でBコアも溜まって来たし、武器の一つも買えばおそらくいける。


 ショップに入るとおなじみの店員Aペットがにっこりと迎えてくれた。


「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」


「武器ください」


「武器のご購入ですね。それではどうぞ」


 ラインナップはいろんな種類があるが剣は3つほど


 私はRPGは攻撃力がすべてを解決すると思う派である。


 木刀・グリーンエッジ・シャドウソード


 ちなみに木刀が安くシャドウソードが一番高い。


 これは何かありそうな感じだ。


 節約を考えると、木刀かグリーンエッジ……ほぼ全財産つぎ込めばシャドウソード。


 これはシャドウソード一択ですな。いい武器はすべてを解決する。


 ためらわずに全額投入。


 私は新しい武器を手に入れてしまった。


 暗い色の刃を持ったクレソンはいつもより5割増し凛々しい気がする。


 でもこれ?攻撃力とか書いてないな?


 その代わりある項目は、ウエポンスキル。


 シャドウソードはドッペルというウエポンスキルを持っていて、一定確率で回避率が上がるんだとか。


 これは中々強そうなんでは?


 現状出来る限りの準備が整ったのなら……さっそくサファイアちゃんに会いに―――もとい決戦である。


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