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1・最初の相棒

 さてゲームをしよう。


 本格的にストーリーが始まるんだから、今日のおかずはちょっと気合いを入れておしゃれにしてみたい。


 クレソンと、ウニがあった。それを軽く炒めて、カリカリに焼いたバゲットの上に乗せる。


 さらにキンキンに冷えたコップと、コーラを用意。


 皿に用意して、デジタル世界へ行ってみよう。




 前回はキャラクリでようやく納得いったところだったか。


 電源を入れてゲームが立ち上がるまでに一つ試しにバゲットをウニクレソンと共に一口。


 若干の生臭さをクレソンの風味が打ち消し、うま味だけがサクサクという歯ごたえと共に鼻を抜ける。


 さらにそこにコーラを飲めばパラダイスである。


 次々食感を楽しんでいるうちに、前回の続きは始まった。


「……」


 まず幾何学的な模様の刻まれただけの簡素な部屋に私は座っていた。


 あるのは一脚のデスクと、端末のようなものだけ。


『これが君の工房だよ』


 聞こえた声は、つい先日聞いたのと同じもの。


 色々いじくってみると、今は何もないが工房は好きなように改装も出来るようだ。


 まぁそれはゆくゆく考えるとして、今はまず自分の状態を確認することにしよう。


 このゲームは自分で作り出したAペットを戦わせてストーリーを進める。


 パーティは最大で5体。


 これから旅の中でどんどん増やしていけるはずだった。


 あとは、Aペットに服を着せることで色属性を付与できる。


 属性とやらはゲーム上の相性が生まれるということだろう。


 色は全部で7色で、黄色 緑色 青色 紫色 赤色 黒 白。 


 最初は初期服の色を選んで、Aペットに着せられるようだ。


 所謂布の服的な、簡素なスエットのようなものか、レオタードか選べるようだが……正直かっこいいのはレオタードの方かな?


 その辺りの選択は各々に任されているようだが、防具は防御的なパラメーターはないようだ。


 つまり気にするのは色だけでいい。


「えーじゃあ。適当に白でいってみようかな?」


 私は白を選択して次へ進む。


 すると今度は装備に関する項目が出て来た。


 最初は何の武器を持たせるべきか?


 色々と種類はあるみたいだが私は検索しながら一つ一つ確認していった。


 持つ武器の熟練度を上げることでスキルを習得できる。


 スキル欄は5つ。


 そこに何をセットするかで立ち回りが変わってくる。


 スキルは武器ごとに存在し、武器を変えても覚えたスキルはいつでもセットできるから、遠慮せずに色々試せるようだった。


「今はなんとも……まぁやってるうちにわかるだろう」


 最初は基本操作を最低限学習しつつ、フィーリングで進むのが私の基本スタイルである。


 設定が終わりステータス画面を閉じると、ストーリーが進行して私の前にノイズが走り彼女は私の前に姿を現した。


「出来上がりかな? こんにちは。ようこそアニマペットの世界へ。僕はダイア。君を導く陽気な案内役さ」


 スクリーンショットをパシャリ。


 よし。素敵フォルダーが潤った。


 ダイアと名乗った彼女の声は私をここまで案内したナレーターと同じだった。


 褐色銀髪で一人称僕とは中々設定を盛ってくれる。


 カジノのディーラーのような姿も素敵である。


 おお、ではダイアさん。よろしくお願い申し上げる。


 冒険はここからだという雰囲気を醸し出す素敵な案内人との出会いに私の胸は高まった。


「さて君はこれからAペットクリエイターとなって、最高のAペットを制作してもらうよ」


 無論そのつもりである。


 戦う育成ゲームで最高が何なのかは私にも予想が出来た。


「では何をもって最高とするか? それはとても簡単。Aペットはそのデータ同士を戦わせることが出来るんだ。そしてクリエイター達が集い、作品の優劣を競うクリエイターズフェスが開催される。もうわかるだろう? そのフェスの優勝作品には最高のAペットである証『アニマペット』の称号が与えられるってわけさ」


 ダイアさんがニヒルな笑みを浮かべて美人。


 もちろんこの私に断る理由などない。


 シンプルな目標は大歓迎である。


「目標にするには悪くないと思うよ。君は特別優秀そうだから期待してる」


 うん、やる気出た!


 我が作品にそのアニマペットの称号とやらいただくとしよう。


 スクショの枚数を順調に増やし続けている私にダイアはアイテムを転送してきた。


「ああ、それと最後にこれはプレゼントだ。受け取ってくれるかい?」


 ダイアはポコンと空中から丸っこいものを出す。


 それは私の前に浮かび上がってピコンとライトを光らせた。


「君専用の携帯端末だ。まずはこれで、君の相棒に名前を付けてあげるといい」


 プレゼントを渡したダイアはひらひらと手を振る。


「僕は君達の努力を期待してる……でも僕としては―――まずはこの世界を楽しんでほしいな」


 ハイ! 喜んで!


 ニッコリと微笑むダイアに私の鼻の下はべろべろである。


 しかしAペットは人形っぽいのに、ダイアはずいぶん感情豊かだなぁ。


 いつの日か我が作品も成長すればそうなるのかもしれない。




 ではいよいよ重要イベント、最初の相棒との顔合わせだ。


 まぁ、穴が開くほどその顔は見ているが、重要イベントなのは間違いない。


 さぁ出てくるのだ我が最高傑作よ!


 私は貰ったばかりの端末とやらを使って命名したAペットを呼び出すと、光と共に彼女は私の前に現れた。


「出てこいクレソン!」


 え? ネーミングの由来? まぁ察して。


 はい、すごくおしゃれー。私は中々上手に出来たキャラメイクのテンションのまま、冒険へと赴くことにした。




「お? これは想定外。もっとデジタルデジタルしてるのかと」


 拠点から外に出ると、そこに広がっていたのは長閑な田舎町にも見えるフィールドだった。


 うーんめちゃくちゃ広いけど。誰もいなさそうだ。


 フィールドを散歩するだけでも楽しいと言う話だったが、確かにこの解放感は立っているだけでも面白い。


 さてせっかく呼び出したので、外に出た記念にちょっとだけクレソンを観賞してみるとしよう。


 うちのクレソンは女性型ハ型の素体ベースのクール美女である。


 ショートカットに凛々しい相貌が光る。


 女性型は服装もアクセサリーも豊富という話だから、この先おしゃれもしてみるつもりだ。


 せっかくなのでここは一つうちの子をこのフィールドと一緒にスクショしておくのもいいかもしれない。


 この角度がいいかな? なんて若干ローアングラー気味になっていた私は突然後ろから話しかけられた。


「あなた……ひょっとして新しいクリエイター? なにしてるの?」


「ちゃうねん」


 私は思わず否定から入った。


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