16・ファンタジーコミューン
いったん休憩。
部屋のベランダから外に出て頭を冷やす。
外は夜。夜風が私の頭を冷やし戻った頃には、いくらか冷静さが戻っていた。
うん、絵面がすごいけど、新たな仲間もまたかわいい作品だ。
「……まぁいいか。ブロッコリーいいじゃないか。まだ枠は沢山あるわけだし」
バトルなんだから強そうなのはよいことである。
そして私は、新たなコミューンを目指して進む。
もちろん美女1人と、マッチョ2人を引きつれて。
私は気合を入れてゲームにログインを試みた。
なぜならば次のエリアは、少々面白いらしいと小耳に挟んだからである。
面白いなら堪能せねばなるまい。
ではゲームを始めるとしよう。
私は新たなコミューンに足を踏み入れる。
転送された新たなコミューン。
私が最初に目にしたのは中世ヨーロッパのような街並みだった。
時代が逆行した? 一瞬そう感じたが、それだけではないようだ。
地面のところどころに突き出しているのはクリスタル。
空を見上げれば、浮いている島が無数に存在し近代的なビルや、空飛ぶ乗り物も散見される。
そして極めつけが、町の中央にある巨大な城に見せかけた遊園地だった。
キラキラ輝くその街で立ちすくむ私の前に、パンとやたらハートが飛び散る光が弾けて、コミューンの管理者はやって来た。
「やっほー! いらっしゃい新入りさん♡ ボクはこのファンタジーコミューンを管理するAペット、ルビーだよ♡ このコミューンは楽しみと創造のための場所なんだ☆」
おぅキュートガール……!
失敬、ちょっと取り乱した。
今までの管理者とは明らかに違う、エンタメ的キラキラが私を襲った。
「だから君ものびのび羽を広げていってね♪ じゃあ今度会えるのはライブかな!」
ロリでポップな管理者がやっぱり話しかけて歓迎してくれる。
でもその動くたびに弾け飛ぶ♡とか☆とか可愛い。
私はいつか導入しようと、エフェクトのことをメモしておいて、存分に新しいAペットを観察した。
スクショスクショ。
……いいな女の子機体。やっぱ目の保養になるわぁ。
そしてやはりこのゲームを作り上げたチームの推す、メインシナリオキャラクターはモデルの精度が違う。
どのコミュでもそのクオリティの高さに、思わず参考にしてしまいそうになった。
「うーむ……やはり、私は判断を誤ったのか?」
呟いてから、はっと私は自分のメンバーを眺めた。
心なしかブロッコリーが悲しそうな顔をしている……気がする。
い、いや、お前もいい作品だよ。ナイスバルクだよ。
「うんうん♪ いいね君の作品。どれも愛情籠ってる感じする!」
ええ? ルビーさん筋肉好き? ほんとに?
「次の君の作品も、彼らみたいになるのかな? とっても楽しみ!」
いえ? 今度のやつは美少女の予定ですよ?
お前を倒した後でだがな。
存分に参考にしつくすのでライブのチケットください。お願いします。
他愛ない願いもむなしく、ハートを飛ばして手を振るルビーちゃんは消えてしまった。
―――残念。ライブチケットは自分で買うしかないか。無常である。
お祭り気分を味わうために、ポップコーンでも買ってきて、シャカシャカしてみようかな? 私はそんなことを考えた。