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14・ショーバトルに参加しよう

「……」


 タイ焼きを頭から食べるか、尾から食べるか。


 全然他愛のないことだが私は食べる前にちょっとだけ考えてしまう。


 尻尾にも頭にもあんこがぎっしり詰まっているタイプのタイ焼きであれば、そこは大した問題ではないかもしれない。


 しかしどちらかに寄っていた場合、私は今日、甘い方から食べたい派だった。


 あんこを食べてタイ焼き!って感じを味わい、後にカリカリの尾を齧る。


 ふんわりサクサク、この順が落ち着くマリアージュだと思うわけだ。


 まぁ本当に些細なことだ。


 しかし、確実に一口目の満足感は変わる選択だろう。


 私は意を決し、頭から豪快にタイ焼きを食べた。


 そしてたっぷり詰まったあんこを確認した。


「うむ」


 小豆だ……。


 小豆でしか摂取出来ない、独特の甘味ゲージが確実に溜まった。


 そして尻尾。


 最期にお茶。それも濃い目に出したお茶は私の選択の正しさを証明した。



 さて至福の時を味わったのだから、拾ったアイテムの事なんて忘れよう。


 限定解除できたのだし、新たに生まれた特権を確認していくとしよう。


 まずはお楽しみAペット3体目所持解禁。


「うん。これは素晴らしい」


 そろそろ3体目ともなれば私も戦略的なバトルが楽しめるようになったと言えるだろう。


 それを示すように、オンラインバトル解禁のお知らせが届いていた。


 今まで閉鎖されていたオンライン用の施設が使えるようになったんだとか。


 ただオンラインについては、ただ単純にバトルが出来ると言うだけではないらしい。


 私はふと気になる項目を見つけた。


「ショーバトル? シティコミューン大会限定解除?」


 なんかよくわからないが、そういうルールでもオンラインで遊べるようだ。


 私は好奇心に突き動かされるままに、オンラインが遊べる施設にやって来た。


 するとそこには3人の同型Aペットが、無機質な表情で座っていた。


「ようこそ。オンラインステーションへ。こちらではオンライン対戦。ショーバトルへのエントリー。観戦が可能です。本日はどのようなご用件でしょうか?」


 ほほう。ではさっそくバトル……はちょっと怖いので、ショーバトルってのをやってみようかな。


 ショーバトルは、見た目を競う競技のようだった。


 ステージに思い思いの服を着せたAペットを参加させ。観客はいいと思うAペットに票を入れる。


 投票された票の多さで、勝敗が決まるようだ。


 場合によっては審査員制とか色々ある。……攻略サイト情報である。


 こっちは、一体からでも参加できるみたいだし。


 誰かと対戦しようにも、キャラクリだって3体目すらまだできていない。


 本格ネットバトルに参加したところで、上級クリエイター達からわからされるだけだろう。


 ならば頑張って作ったキャラクリエイトと制限の中で買った服で勝負した方がゲームになるのではないだろうか?


 まぁミニゲームみたいなもんだろうから気軽に気軽に。


 これもまた選択である。


「よし、ショーバトルにも色々枠があるのか……」


 これは……なにかの限定イベントって書いてあるけど、初心者でもエントリーは普通にできるみたいだ。


 私は非常に軽い気持ちで、クレソンをエントリー。


 すると、私が選んだ大会にエントリーするにはとある店舗で買った衣裳で統一することとある。


「なるほどだから限定大会というわけだ」


 データだけならゲーム内通貨だけでいいみたいだから、一揃え買ってエントリーは終了だ。


 頑張れよクレソン、我がセンスが全世界で問われる瞬間である。


 だがゲームというには、エントリーしてポーズをいくつか選択してしまえば後は見ているだけだった。


 参加したAペットは10体一組でステージ上にモデルさんのようにやって来た。


 モデル歩きは男性用と女性用で違うらしい。


 バシバシと雨のようなフラッシュが瞬く中、颯爽と歩く姿はまるで本当のファッションモデルさんの様だ。


 店で縛ってあるからか、突飛な服装は少なく現実的な服によるファッションショーを見ている感覚だった。


「気に入ったAペットのデザインを保存することも出来るのか……それは中々」


 キャラクリに自信がなければ、こうやって気に入ったクリエイトとコーディネートのレシピデータを流用することもできるよということらしい。


 どのAペットも気合が入っていて、ライバルは手ごわいようである。


 そしてクレソンの順番がやって来る。


「おおおお……うちの子が、ステージへ」


 見事なモデル歩きで私のAペットがステージへ上がっただけで、テンションは爆上がりだった。


 心なしか、ショーだけあってグラフィックも気合が入っている気がする。


 フラッシュの数は、オンライン上での評価の数らしい。


 ステージ中央での決めポーズは私が選んだんだ。


 最後に微笑みターン。パーフェクッ!


 返っていくクレソンは最高に輝いていた。


 フラッシュも多かったところを見ると、おおむね好評だったか。


 服装のセンスなんて正直自信はない。


 だが服屋で真剣に選んだとしてもデザインよりお値段と相談する私には新鮮な経験だった。


 ミニゲームとしてはちょっと楽しかったよ。


「それでは今回のステージ……最も注目を集めたAペットは―――7番! クレソンです!」


 うおおお! マジでか!


 一番! やっぱうちの子最高だよなぁ!


 私は興奮しつつ、クレソンを褒め讃えた。


 いやぁゲーム内の資金を必要以上に服に投入した甲斐があった。


 この後その代償としてバグ狩りに励む予定だが、後悔はしていない。やったった感じである。


 その時ピロリンとアラームが鳴り、メッセージが届いた。


 ゲームの中ではない、リアルの通知に身体が強張る。


「ん?」


 私は何事かと確認すると、メッセージは運営からのようだった。




運営


此度は、〇×社様主催のショーバトルにご参加いただき、まことにありがとうございます。

それに伴いまして、あなた様のAペット『クレソン』が1位入賞いたしましたので、モデル起用が決定いたしました。

またモデル料が発生いたしますので、必要事項をご記入の上返信いただけますと幸いです。


辞退する場合。三日間返信がない場合は正式に辞退したと判断されますのでご注意ください。


それではよろしくお願いいたします。

今後ともアニマペットをよろしくお願い申し上げます。



「……へー」


 ふーん。なるほどなぁ……報酬って、モデル料?……はぁ!? モデル料! ガチのお金か!?


 私は目を疑う。


「……!?」


 うちのクレソン雑誌デビューか!


 私は慌てて、今出たショーバトルの詳細を確認すると、どうやら服飾メーカー主催のイベントで上位入賞者のモデルデータが雑誌で使われるということらしい。


 報酬は口座に入金か。通販で使えるポイントか選べるみたい。


 もちろんゲーム内報酬だけもらって、ややこしい事はしないというのもアリらしい。


 私は迷わずゴーサイン。


 嘘。部屋の中をしばらく落ち着かずにうろうろして、HPを穴が開くほどチェックした後GOサインした。


 だっておっかないし。


 私は震える手で、チェック項目を3回ほど確認して返信。


「……フゥ」


 一息つき、椅子に深く座り込んだ私は、残っていたタイ焼きを手に取った。


 簡単な選択が思いもよらない結果を導き出すこともあると言うことか。


 そしてついつい……。


「うむ」


 と頷き、ニヘリと笑ったあと、タイ焼きの頭にかぶりついた。


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