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10・シークレット機能

 バリッゴリッっと、口の中で音がする。


 ピリリと辛い戦いをするなら濃い目のしょうゆ味。


 醤油せんべい齧る手が、止まらない。


 ほんの休憩のつもりだったのだが、一度食べると、数枚私の前から消えていた。


 普通に食べるだけなら3枚も食べれば満足していたかもしれない、しかし……私の手の中にはいつの間にか冷え冷えコーラが、炭酸を弾けさせていた。


 ああっ! ダメだこれは……止まらない。


 そのうち袋が空になるのはもはや止められそうにないので、このまま攻略に移りたいと思うバリボリ。


 では経験値を稼ごう。


 クレソンと入れ替わりからのダブルスラッシュ。


 交代時、受けるダメージは少々痛いがクレソンの剣戟は順調に威力を上げていて、相手のAペットを斬り捨てた。


 勝負が終わったら、捨て台詞を聞こう。


「ひー! アンタツヨスギー!」


 そうでしょーう? 経験値とBコアを置いて逃げるがよい。


 しばらくは、見た目を固めたスピニッチではなく、クレソンが2倍頑張ることになるけど勝てないことはないのが重要だった。


 並みいるクリエイター達をなぎ倒しながら進む私は、しかし街中でトラブルに遭遇した。


「人のAペットを盗ろうなんて許せない!」


「うるせぇ! お前のAペットもよこすんだよ!」


 白昼堂々、街中で女の子と変な格好の男達が言い争っていた。


 何だあれ?


 イベントの匂いを嗅ぎつけて私が近づくと、知っている顔がなんだか独特な男達と睨み合っている。


 いやあれは男なのだろうか? 丸っこい着ぐるみに、三つ穴の開いた仮面を付けていたら、それはもう性別不詳のキャラである。


 だが相手が誰であろうと関係がない。


 私は颯爽と前に進み出た。


 おうお前ら、リコちゃんが怖がっているではないか。パンプアップしたうちのスピニッチが黙ってませんよ?


 いや、一番レベルが高いのはクレソンですがね。


 するとリコちゃんはさっそくこちらに気が付いてくれたようだった。


「あ、君は!」


 みなまで言うなリコちゃん。事情はだいたいさっき言ってたからたぶん知ってる。


 ならば敵は倒すのみ、RPGの常識である。


「何だてめぇ! 俺達ノイズーラに逆らおうってのかズラ!」


「お前もクリエイターか! お前のAペットも貰ってやるズラ!」


 よし。かかってこいズラ! この珍獣ABども!


 悪キャラムーブからの、出会って即バトルは基本を押さえていて敵キャラとして好感が持てる。


 しかし出て来たAペットが2体だったことに私は動揺した。


 これは……まさかダブルバトル? 二体でバトルとか始めて何ですけど?


「あたしもやるよ! 出て来てリコリス!」


 え? リコちゃんも? 共同作業しちゃうの?


 私は歓喜した。


 ならば負けることなど許されない。せっかくなのでここにきて、手に入れた新たな力を披露することにしよう。


 私は新たなスキル『エアエッジ』を選択。


 エアエッジはようやく覚えた物理以外のスキルだった。


 剣になにかの力を溜めて、ショット! エキサイティング!


 飛んで行った飛ぶ斬撃は敵Aペットの顔面を捕らえた。


 すまぬな。しかし敵対した君が悪いのだよ。


 だけどせっかくの新技だったが、思ったほどダメージの伸びはよくなかった。


「え?なんで?」


 戸惑ったが答えは簡単である。


 成長値の振り分けはスピードとアタックに少し。


 ショットはカラーアタックに分類されるスキルで、数字は威力に直結する。


 つまり貧弱なのだ。


 ゼロじゃないんだから、序盤ならどっちでもよくない?と見た目重視で採用したが、既に影響は露骨の様だ。


 うーむ遠距離攻撃っぽくてかっこよかったのに、これは外した方がいいかもしれない。


 クレソンは物理専門で攻める。


 結論は出たが、ちょっとこの戦いはまずかった。


 敵Aペットは弓を構えて、クレソンを射る。


 まっすぐ飛んできた矢はクレソンを貫き、光のエフェクトを飛び散らせてダメージを与えた。


 これが中々効く。


 つまるところピンチである。


 これは仕方がない、リコちゃんもいることだし私はいったんクレソンを回収して、代わりにスピニッチを前に出した。


 相手はそう強くはないが、相性を覆せるほどの差がない。


 ここはスピニッチを回復の起点に……そう考えていた私はコマンド欄に違和感があることに気が付いた。 


 なんかちょっと変わってる?


 いつからかは知らないけど、なんかコマンド画面が違う。


 違和感の正体を探しているとスキル欄の端っこに髑髏の付いた薄い赤い丸を発見した。


 あれ? こんなのあったかな?


 どうにもそれはボタンのようにも見えるが、これみよがしに危険を強調する髑髏がとても目を引いた。


 なるほど。私はすぐさまボタンを押す。


 そりゃあ押すだろう。ボタンだよ?


 その瞬間、スピニッチの体が赤く輝き、」頭の上に謎のカウントダウンが表示された。


 これはまさか―――。


 私は焦るが―――すべては遅かった。


 ファイブカウントはほとんど悩む暇もなく0を刻み、スピニッチは眩く輝き爆発した。


 ボンと派手に一撃である。


「…………えぇ?」


 攻防でかなりHPを削られていた相手のAペットは爆発に巻き込まれて、一撃でそのHPを0にした。


 おお……これはすごい威力だ。


 だけど私のスピニッチも煙を吹いてぶっ倒れた。


 もちろんHPは0だった。


「えぇぇぇ……すまぬ。知らなかったんだスピニッチ」


 そしてさらについでに、となりのリコリスも爆発に巻き込まれて戦闘不能だ。


 初ダブルバトル記念日が、こんなんでよかったのか?


 結果的に死屍累々、アレは自爆ボタンだったのか。


「……なんてものシークレットで実装するズラ」


 チョット切り替えよう。勝ちは勝ち!


 ちなみに、別にイベントなどではなく、自爆装置はシティコミューンから、標準搭載らしい。


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