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「カヨくん!カヨくん……!」
ユズが立ち上がって俺に抱きついてくる。足を擦りむいてしまったみたいだ。俺のせいで。
「……ごめん」
「ばか、ばか……!もうあんなことしないで……!」
イオリの言う通りだ。ここで消えるのは簡単だが、俺はこの子にトラウマを背負わせてしまうところだったらしい。ただでさえ一人死んだところを目の前で見てしまったというのに。
「命は大切にするべきさァ。カヨちゃん、まだ若いんだからねィ」
「そういうアンタは幾つだよ」
「ふふん。オレっちの年齢は企業秘密でィ」
言いながらイオリは煙草を取り出して吸う。……うん。少なくともこれで未成年の線は消えたな。
「ごめん。もうあんなことはしない」
「……うん。約束してね」
そう言って涙を拭うユズの頭を撫でると、彼女は人懐っこそうな笑みを見せてくれた。
「や、やばいじゃん……!あそこ何かくっつきそうじゃんかあ……!」
「……?それの何が問題なんだ」
「相手が一人減るってことじゃん!だってこれ、全員くっついたとしても男は一人余るんだろ!?」
バケツの服の襟の部分を掴み、揺さぶるヒメコ。
「いやいや、ヒメコー。焦ることないんだってー」
「ひっ!ギャル……!」
「だって余るのは男なんだからうちらはそんな焦る必要ないしー。焦るのは男連中の方じゃねー?」
「あ、そ、そっか……」
しかし、ヒメコは焦っていた。ここに居る男女、わりかし顔面偏差値は良いということ。そして自分の顔面偏差値が低いことを、彼女は知っていたからである。
(余らないとしても、アタシはきっと……ハズレ扱いなんだろうな……)