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「はいはーい!テンポよく行こー!次!そこのー……」
レインが途中で言葉を止める。俺達も思わず唖然とした。というか、ぶっちゃけ最初からツッコみたかったのだ。何故なら……
「何なんそのイカしたバケツは」
その男は頭に大きなバケツを被っていたからだ。
というか遠慮なく触れていくなオーミ。空気の読めない関西人か。
「……清掃のバイトで転んで頭突っ込んで抜けなくなった」
「ええ!?何やねんそのおもしろエピソード!もうキミの名前バケツくんな!決定!」
「む……バケツくん……」
ゲラゲラ笑いながらオーミがバケツ男のバケツをガンガン叩く。響いてうるさそうだ。バケツ男は不服そうである。当たり前か。
「バケツかわいい……」
「えっ」
俺の後ろにいたユズがぽそりと呟く。可愛いか?アレ……。
「じゃあ次は緑髪のそばかすちゃん!」
「ひ、ひぎぃ!気配消してたのに……!」
自分のお下げ髪をぐいっと引っ張りながらビクッと跳ね上がる女子。
「あ、ああアタシはぁ……うぐぐ、その、ああもうこの自己紹介の雰囲気苦手なんだよくそぅ……!」
もしかしてコミュ障?陰キャ?ってやつだろうか。知らんが。
「か、完全にインパクトはバケツに持ってかれてるし……!ど、どうせお前らアタシのこと地味子とか呼ぶんだろ……!ああそうさどうせアタシは地味で陰キャなブス女だよ……!」
「……?別に誰もそんなことは言っていないだろう」
「う、うるさい……!アンタのバケツインパクトのせいでアタシは地味子になっちまったんだよ……!」
「はあ……ならさっさと名乗りたい名前を名乗ったらどうですか」
呆れた様子でイガラシが口を挟む。
「……ヒメコ。ど、どうせ似合わないとでも思ってるんだろ……アタシは地味子だってそう言いたいんだろ……!」
誰も言っていない。どうやらこのヒメコは被害妄想が激しい女らしいな。