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「しょーこ、大丈夫……?」
「ああ……すまない。せっかく部屋に上がってくれたのに茶菓子のひとつも出せないで……」
レインさんの手を借りながらベッドに横になる。まだ頭は痛むが、立っているよりはマシだ。
そういえば記憶が無い筈なのに、彼女が呼ぶ "しょーこ" という名は妙に自分に馴染んでいるな……。
「そんなん良いから。ゆっくり休めし」
「……ありがとう。レインさんは優しいんだな」
「……ん。なんかその、さん付け、変な感じする。しょーこはうちのこと、呼び捨てしてたもん」
やはり、私と彼女は生前に関わりがあるようだ。しかも彼女の様子からするに、かなり親しい間柄だったように思える。……思い出せないのが申し訳ない。
「……良ければ、私と君の生前の関係を教えて貰えないか?」
私が聞くと、彼女は困ったように笑った。
「えと……でも今しょーこしんどそうだし、無理に思い出させたくない」
「気にしないでくれ。横になっていれば楽だから。それに……私が知りたいんだ」
自分のことを何も知らないまま過ごすのは辛い。それに、彼女に対して失礼なことはしたくない。多少無理をしてでも、私は記憶を取り戻したいのだ。
「どうしても今聞きたいん?ゆっくり休んだ後にしない?別にうちは逃げたりしないし」
「ああ。どうしても今知りたい」
こんなモヤモヤしたまま眠れる訳が無いんだ。私は彼女に食い下がる。
すると、彼女は顎に手を当てて、うーんと悩みはじめた。
「……はあ。わかった。しょーこって、一度気になったことは自分が納得するまで詰めるタイプだったし、話す」
「……むむ。生前の私はそんな面倒くさいタイプだったのか」
「うん。けっこー、いやちょーぜつメンドーなタイプだったし」
……生前の私め。超絶面倒くさいタイプだと言われているぞ。
まあいい。話してくれる気になったようだし、今は彼女の話を聞くとしよう。




