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「ゾンビちゃうって!ボクらちゃんと生きてるって!」
そう叫んだのは真っ先にこちらに向かってきた少年だった。
歳は多分、俺達よりも下に見える。おかっぱという特徴な髪型をしているせいかもしれない。
「ふ、ふえ……?ゾンビじゃない?」
安心したかのようにユズがぺたりと座り込む。
「まあ、普通の人間に見えるな」
「おっ、話が分かるやん!何か天使ちゃんが言うにはラブですゲーム?ってのをせなあかんのやろ?どんなゲームか知らんけど!」
「……要するに、カップルになれば生き返れるとかそういうやつじゃないですか?」
ふいに口を挟んできたのは……長身で美形な奴だった。中性的だから男か女かは分からない。ただ、それよりも目を引いたのは特徴的な白い髪だった。
「……!!めっちゃどタイプやねんけど!良かったら俺と一緒に生き返りませんか!!」
「私は男なのであなたとは無理ですね」
バッサリ斬られている。哀れだ。
「ちゅーもーく!!」
こちらが盛り上がっている(?)ところに天使がマイクを持って叫ぶ。
「盛り上がってるところ悪いんですけど!やっぱりカップルになるためには自己紹介って必要だと思います!なので今からは自己紹介タイムになりまーす!」
……自己紹介か。自分の名前すらも思い出せないのに。
「あっ、でも多分!皆さん生前の記憶があまり無いと思いますので!自分で名乗りたい名前名乗っちゃって大丈夫ですよ!わかりやすいように名札もお配りしますので!サガミさん、お願いします!」
「その名で呼ぶな、アホ天使。そして俺をパシるな」
悪魔がブツブツ言いながらも指を鳴らす。すると目の前に名札が現れた。……小学生が付けるようなアレだ。
「サガミさん……センス無いんですね……」
「喧しい」
「とりあえずその名札に自分の名前を書いて見えるところに付けるようにしてくださいね!」
アレはきっと尻に敷かれているんだな……と思いながら俺は自分が名乗ることにした名前である《カヨ》と書く。
「やっぱキミらも名前思い出せへんの?ボクもやねんけど」
「う、うん。そうなの。ねっ、カヨくん」
「ん?……ああ」
「へえ、キミらはカヨくんとユズちゃんって言うんや。ボクはオーミ!生前そんなニックネームで呼ばれてた気がしてたからこの名前にしてみたで!」
先程のテンションの高いおかっぱ男が聞いてもいないのにベラベラ語り出す。関西人だろうか。ユズが若干怖がっているので俺は彼女を背中に隠すようにして守った。
「おお?もしかして二人デキてるん?」
「出来てない。こいつはお前に怯えてるんだ」
「えっ、何でやねん!どう見てもボク、害のなさそうなかわええ顔してるやん!」
そういうことじゃない。お前のテンションの高さについていけてないんだ。
しかも俺とデキてる……なんて、いくら何でもユズに失礼だろうが。
「まあええわ!で、そこの別嬪さんは……」
「……イガラシ。由来は特に無いです」
さっきの白い髪の男か。身長のせいか落ち着いた態度のせいか俺達よりも年上に見える。
「イガラシちゃんか!よろしゅう!」
「……イガラシくんです」
そんな二人のやり取りを見て、俺の後ろに隠れていたユズがくいくいと俺の袖を引っ張った。
「どうした?」
「ふふ、なんか面白いねって」
「……?そうか?」