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……もう疲れた。何度泣き叫んでも返事は無いし、アタシ達がここに居ることを知る奴はいない。
こんなことしなきゃ良かった。あのバケツ男の言う通りだった。天使を騙せる訳無かったんだ。
しかも、このまま衰弱死しろって言うのが恐ろしい。だったらすぐに殺してもらえる方が幾分かマシだったかもしれない。
今、何時間経っただろうか。分からない。暗いし寒いし怖い。心が折れそうだ。
「……ごめんな、変なことに巻き込んで」
小さな声で、関西人が謝罪の言葉を口にする。
「は……?」
「やっぱ悪いことしたらあかんなあ……。ボクだけならまだしもキミまで巻き込んで、ごめんな」
「な、何言って……」
だって、そもそも誘ったのはアタシだ。アタシがコイツの部屋に行って話を持ちかけたからこそこうなった訳で。
原因があるとするならば間違いなくアタシのせいだ。
「さ、誘ったのはアタシだ。だから、お前はアタシに巻き込まれた被害者だろ……」
「ボクは最初からこの計画考えてたんや。そこにキミが現れてボクのことを誘ってくれたから棚ぼた的に乗っかっただけやねん」
「で、でも……」
「だからキミ一人が責任感じることあらへんよ。どっちも悪い。これでええやん」
……コイツは聖人か?アタシなら、同じ状況だったら間違いなく相手に当たり散らして相手のせいにしただろう。
そして、巻き込んでしまったことに申し訳なさを感じた。
「……ごめん」
「もう謝らんでええよ。それよりもどうやって脱出するか考えな」
そう言われ、上を見上げる。なかなかに高いし、周りには掴まれそうな突起物なども無い。あったとしてもガッツリインドア派のアタシには登ることなんて不可能に近いだろうが。
「壁、ツルツルやなあ……」
これでは登ることは無理だろう。やっぱり現実的なのは誰かに気づいてもらうことなのだろうが、アタシ達がこの作戦を行うことを誰にも言っていなかったことが災いしている。もし言っていたなら、誰かが察してくれてもおかしくなかったのだが。
「うう……」
涙が出そうだ。確かに悪いことをした自覚はある。だけどここまでされるほどのことだっただろうか。
しかし最早心が折れそうだったその時に、それは現れたのだ。




