3-6
「え……」
天使の冷たい声が聞こえると同時に、アタシと関西人は何処かに突き落とされた。
「……ったあ……」
「な、何やここ……」
「そこですか?落とし穴ですよ?」
かなり上の方から天使の声が聞こえてくる。どうやら、結構な高さから突き落とされたらしい。
「な、何すんねん!生き返れるって言うたやないか!」
「だってあなたたち、あたしに嘘ついたじゃないですか。好き合ってもない癖に恋人だなんて」
バレた……!?何故だ。演技が完璧だったとは言わないが、それでも嘘だなんて言われる筋合いは無い。
「……見えるんです、あたしには」
「は……?」
何を言っているのか分からない。いったい、お前には何が見えるって言うんだ……?
「今だけ特別に見せてあげますね。あなたたちの恋心」
天使がステッキを振る。すると……
「な、何だこれ……!胸のところにハートが……!」
「ハートの形の器が見えますよね。そしてその器は透明な筈です」
確かに、天使の言う通りアタシの胸にあるハートの器は透明だ。そして、目の前にいる関西人のハートの器も透明。
「これ、今自分の目の前にいる相手に対して特別な感情を抱くと色が変わるんですよ。友達感情だと黄色、ちょっとキュンってするとオレンジ色、その人のことを好きになっているとピンク色に。そして、愛していると真紅のハートになるんです」
アタシと関西人はお互い目を合わせた。しかし、器の色は変わらない。
「友達以下の感情だと、無色透明なんですよ。つまり、あなたたちに恋愛感情なんて皆無だったんです」
「……!そんなのが見えるとかチートだろ!」
「まあ、こういうことを考える人がいるだろうなあとは思いましたよ?だからあたし、ハートに色がついていれば許そうかなあって思ってたんです。だけど、あなたたちのハートに……色は無かった」
「……友達感情があればまだしも、ただの利用するだけの関係。そんなので恋人?笑わせますよね」
天使は、笑顔だった。だけど、声は絶対に笑っていない。本気で怒っている。
「だからおしおきです。ぱーんしても良かったんですけど、楽に死なせるのすら嫌になっちゃったので。死ぬまでそこに居てください。あ、もう死んでますね。なら消滅するまでそこに居てください」
言いながら天使は去って行こうとする。嫌だ。死ぬまでここにいろなんて絶対に嫌だ……!
「ま、待ってえな!ちょっとふざけただけやん!もうせえへんから助けてや!!」
「あ、アタシも、もうしない!もうしないから……!!」
その言葉に、天使は足を止める。
「じゃあ、あなたたちがここに居ることに気づいて、助けてくれる人がいたらまたゲームに参加する権利をあげます。まあ、そんな人が居なかったらそのまま死んでもらうだけですけど。それでは」
「……!やだ、待って!待ってよぉ……!!」
それから後は、何度叫んでも、言葉は返って来なかった……。




