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……バケツ男が無理だったなら、もう選択肢はひとつしかない。
「関西人かあ……アイツも苦手なんだよな……」
だけど人は良さそうだった。それに馬鹿そうだし、案外こっちの話をちゃんと聞いてくれるかもしれない。
そうと決まればあの関西人の部屋に……
「……は?何だよこれ」
何となくポケットに手を突っ込むと、入れた覚えのない絆創膏が一枚入っていた。
「まさかアイツが……?」
いつの間に突っ込んだんだバケツ男。その早業に若干の気持ち悪さを感じながら、アタシは関西人の部屋の前へと向かう。
「……ここか」
今度は突然扉を開けられないように、距離を取ってノックする。
「はーい、どちらさん……ってヒメコちゃんか」
「話がある。部屋に入れろ」
「えー、どないしたん?まさか愛の告白とか!?」
……めんどくせえ。何で男はすぐに自分に気があると勘違いするんだ。気持ち悪い。
「そういうのいいから」
「あっ、真面目な感じの話なん?……ほな、誰にも聞かれん方がええな」
と、思ったけど。なかなか察しは良いらしい。アホっぽいのに。
「……じゃあ単刀直入に言う。お前、アタシと恋人になれ」
「ああ。それ、ボクも何で皆やらへんのやろって思っててん」
……どうやら目の前のアホそうな男は、思った以上に察しが良いようだった。




