3-2
しかし、問題は誰に恋人役を頼むかって話だ。
カヨって奴は無理だろう。そもそもアイツは生き返る気が無い。声をかけるだけ無意味だ。ただ、あのチビ女はアイツに夢中らしいので、チビ女の動きを止めてくれていることに対してだけは感謝してやることにする。
なら白い奴。アレも絶対無理だ。顔が良過ぎる。しかも聞いてる感じ、性格もキツそうだ。声をかけるだけでメンタルがやられるだろう。
だったらあの青い奴はどうだろうか。いや、アイツも顔面偏差値めちゃくちゃ高かったな。しかも変人っぽいしアイツも無し。
それで残ったのは妙なバケツ男と関西人。……出来ればどちらも勘弁願いたい。
でも他の奴らよりはマシだ。どっちか選ばないといけない。
……関西人、テンション高くてウザそうだしバケツ男にしようかな。
アイツ、アタシと普通に会話してくれたし。第一、アタシがここに来てマトモに会話出来た男はアイツだけなのだ。
他の奴らに比べたら話しかける難易度は低い……と思う。
「……よし」
という訳で今アタシはバケツ男の部屋の前に居る。表札に《バケツ》って書いてあるし、間違いない。
「大丈夫、絶対大丈夫……」
ブツブツと呟きながらドアノブに手をかける。その瞬間……!
「ぶほぉっ!!」
扉を引く前にひとりでに扉が開き、アタシは扉に顔面を強打した。
「……あ、悪い。何か用だったか」
「……っ!!扉は外の確認してから開けろヴォケ!!」
あまりの痛さに鼻を抑えながら、アタシは大声で叫んだ。
普段滅多に叫ばないものだから、喉を痛めたのはここだけの秘密である。




