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「……お前ら皆後悔すればいい」
「お前らが俺を殺したんだって、後悔すればいい」
「お前らは殺人者だ、一生その重荷を背負って生きていけばいい」
……そうじゃないと、何で俺がここまでしたのか、分からなくなるじゃないか─────
「……て、ねえ、起きて……!」
……?
冷たい。俺は何をしている?……寝ている?
というか何なんだ。さっきから側でビービー泣き喚く女の声が、うるさい。
「や、やだ……!もしかしてほんとに皆死んじゃってるの……!?もうやだよぉ……!」
……!そうだ。俺は確か死んだ筈だ。
なのに、どうして。
「何故生きている……!?」
「きゃっ……!」
寝ていた俺が急に起き上がったせいで、俺を揺さぶっていた女子が驚いて倒れてしまったようだが、そんなこと気にしていられない。
「俺は死んだ!屋上から飛び降りて確かに死んだ筈だ!」
「……!?ねえ、あなたも死んだの……!?」
そう声をかけられ、初めてその女子の顔を確認する。ピンク髪の見るからに馬鹿そうな女だった。……まあ、顔は悪くないが。
「……あなたもって。お前それ、どういう意味だ」
「あ、あたし、あたしも死んだの。死んだ筈なの……」
……意味が分からない。なら何故俺達は生きている。
というか、ここは何処だ。周りに何も無い、真っ白な空間。……気持ちが悪い。
移動しようと立ち上がったその時だった。俺の腕を女子が引っ張って止める。
「ま、待って!だめ!そっち、行かない方がいいと思う……!」
「は?」
「だ、だって、」
「…………………!!」
確かに、見ない方が良かったかもしれない。俺の目線の先には、数人の死体が横たわっていたからだ。
「……見たのか?」
「い、生きてるかもしれないって思って……でも誰も反応無くて……起き上がったのはあなただけだったの……」
……それはさぞかし不安だっただろう。
「とりあえず移動しないか。ここにずっと居ても意味ないだろ」
「うん……。あ、えっと、名前……」
確かにお互い呼べる名前が無ければ不便だ。名乗った方が良いだろう。……と思ったのだが、
「……あれ、」
……何故か、自分の名前が思い出せない。
「え、うそ……えっ……?あたしの名前……なんだっけ……?」
それは女子もそうだったようで、困惑する。
何故だ。死んだことはしっかりと覚えているのに。どうして自分の名前が思い出せない。
”カヨ”
「……!?」
ふと、誰かに自分のことを呼ばれた気がした。だけど俺を呼んだのは隣にいるこの女子ではない。
そもそも、”カヨ” って何だ。俺は生前、そう呼ばれていたのだろうか。呼ばれて身体が反応するくらいだ。
「……とりあえず、カヨでいい」
「えっと……じゃあ、カヨくんで」
「お前は?」
「あたしはその……ユズって呼ばれてた気がする、から……えっと」
「ならユズでいいな?」
「う、うんっ……」
呼び名は決まった。だが次はどうすればいい。
ここに居てもしょうがないとは思ったが、移動しても何か意味はあるのだろうか。地面も天井も全てが真っ白な空間で、進めているのかすら分からない。
「あたしたち……死に損ねちゃったのかな……」
ユズがぽつりと呟く。その質問に答えてくれる者は、居ない。
『お前は間違いなく死んだ』
「……?カヨくん、何か言った?」
「いや、俺じゃない」
……じゃあ今のは何処から聞こえてきたんだ。耳をすませるともう一度同じ声が天井から聞こえてくる。
『お前たち二人は死んだ。生き返りをかけてデスゲームをしてもらう』
デスゲーム?生き返り……?
「や、やだ!デスゲームって……カヨくんとあたしが殺し合うってこと……!?」
いやいや、さっき生き返りをかけてとか言ってたよな。なら矛盾してないか?
『もう!それじゃあ伝わらないですよ!というかデスゲームって!ぜんっぜんダメです!楽しくなさそうです!』
『……っ!お前は出てくるな……次のゲーム内容は俺に任せるって言っただろうが……!』
『言いましたけど!つまんないので却下です!デスゲームなんて何年前の流行ですか!だいたい説明するのに天の声ってのがもう古いですよ!』
『待て、それを押したら……!』
「はい、降臨っ☆です!」
天井から聞こえてくる声が喧嘩しだしたと思ったら、急に目の前に現れて俺は混乱している。
しかも現れた二人は片方はどう見ても悪魔、片方はどう見ても天使といった格好だ。
「どうも天使ちゃんと悪魔さんです!」
「それは見れば分かる」
「あうあう!まあそれはおいといて!あなたたちにはこれから天使ちゃんが考えた《男と女のラブです♡ゲーム!》をしてもらいまーす!」
……そんなこと言われてもさっぱり分からん。ということを思っていたのが天使とやらには分かったらしい。天使はニコニコと笑いながら説明を始めた。
「ここにいる10人はみーんな人間界で今日死んじゃった人間達なんですけど!実はあなたたちの死って予定外だったんですよ!」
「よ、予定外……?」
「はい!あなたたちは本来、今日死ぬはずじゃなかったんです!だからゲームをしてクリアーした人には生き返ってもらいます!」
……ちょっと待て。今10人って。
だってここに居るのは俺とユズ、そしてこの天使と悪魔とかいう奴しかいない。
「そのゲームが!《男と女のラブです♡ゲーム!》なのです!!この世界でラブラブになってくっついちゃったカップルを!天使ちゃん権限で生き返らせちゃいまーす!!」
天使がそう言うと、先程までそこに倒れていた死体が次々と起き上がっていき……
「いやあーーーっ!!ゾンビーーーー!!!!」
ユズが大声で叫び、俺にしがみつくのであった。