第六十二幕 決着
クレアVSヴァロワレアン!!
時は少し遡る
『……で、どうするんですクレア?』
私の中に宿るレインフォルトの言葉が頭の中に響く。
眼前に対峙する二本の奇妙な短剣二本を持ち構えるのはアルフレッド=レミアル=ヴァロワレアン……
公爵家当主にして枢機卿の肩書を持つ男……
彼の戦法は徹底的なカウンターでの武器破壊狙い。
かと言って守るばかりでなく近い間合いに入り蹴りなどの攻撃の選択肢を増やそうとすると、的確に牽制を放ってくる。
私は正直攻めあぐねていた。
おそらく、護身のために身につけた技術なのだろうが、その練度は本物だ。
私はジリジリと間合いを詰める。
剣を持ち、駆け引きをする感覚……それは私にとって久々に感じるものだった。
真剣を持って命のやり取りなど初めてということもあり緊張感は今までの練習などとは比較にならないが、それ以上に駆け引きが出来ることが嬉しかった。
シールドチャージでは、駆け引き以前の問題で不利を押し付けられていたため、余計にそれを感じる。
私は手の中の剣を見る。
ブロードソードと呼ばれるオーソドックスなタイプの直剣だ。
タイミングをズラすにしても、生半可なフェイントでは通用しない。
(タイミングを崩せれば……)
そこで私はあることを思い付く。
(できる……?、いや……やるしかない!)
私は剣を小さく振り上げつつ地を蹴る。
ヴァロワレアンが剣を受け止め絡めとるべく動く。
私は構わず剣を振り下ろし、剣と剣がぶつかり合う直前に右膝から力を抜く。
すると視界がガクンとブレて身体が流れてブレる、それに伴い剣先が稲妻の如く暴れ、ヴァロワレアンの剣を避けるかのように走った。
ヴァロワレアンが目を見開く。
予想外の動きに私自身が驚くものの、私は脚に力を直ぐ入れ直し、剣を振り抜くと、その鋒が下がろうとしていたヴァロワレアンの脇腹を抉った。
響く金属音と共にヴァロワレアンは片方の剣を取り落とし、片膝を突いた。
私は少しの間呆然としていたが、すぐにヴァロワレアンと向き合う。
ヴァロワレアンは傷口を押さえて跪いていた。
「見事だね……僕の負けだ……」
ヴァロワレアンは痛みに表情を歪めながらも笑みを浮かべそう言った。
私は彼を見据えて剣をゆっくりと振り上げた。




