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屍術医師 レインフォルト 上  作者: 御蛇村 喬
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第五十五幕 芸術作品

「……さて、君からの質問は以上かな?……僕としても、そろそろ"彼"と話させて欲しいんだけどね……」


 ヴァロワレアンは意味ありげな表情を浮かべそう切り出した。


 私は素直にヴァロワレアンの要求に応える気にならず、眉根を寄せる。


 私はアリエラの教えの下で育ち今まで生きてきた。


 それによっての影響は少なからず受けてるとは思うが、人を人と思わぬ所業をしているこの男に対して許しがたい感情を抱く程に私は反感を覚えていた。


『……代わっていただけますか? 私としても少々彼に対して興味が湧きましてね……』


 レインフォルトの言葉に私は驚きを覚える。


 響いた口調も声音も穏やかだ。


 かと言って言葉の内容に驚いた訳でもない。


 身体を共有しているからわかるのだろうが、彼はかなりの怒りを抱いているのがわかった。


 私が心の中で許可を出すと、体の自由が利かなくなる。


「……お待たせしたようですね、私がレインフォルト=アーデルハイムです……」


「ようやく……ようやくお会いできましたね……レインフォルト=アーデルハイム……!」


 レインフォルトに代わり、明らかに様子の変わった私に対してヴァロワレアンは歓喜の表情を浮かべそう口にした。


 長く焦がれた恋人を前にしたような……そんな反応だ。


「……そうですか……余程私に対してご執心のようですが……理由をお聞かせ願えますかね?」


 静かな声音で私の口がレインフォルトの言葉を発する。


「……かつてあの街で貴方が作った叔父……いや、"あの芸術作品"を!……あれを僕も作ってみたいのですよ……」


 それに対しヴァロワレアンは恍惚とした表情を浮かべ興奮気味に言葉を返す。


「……"芸術作品"……ですか……あれをそう称するとは、なかなかに尖った感性をお持ちのようだ……」


 レインフォルトは目を閉じて一つ息をつき


「……私としては叔父の仇……とでも答えていただいた方がまだ人間としてあなたを理解できたのですがね……」


 レインフォルトは言葉を切り細く目を開けてヴァロワレアンを窺い


「……まぁ、あなたから感じる濃い殺人者特有の気配からすれば、納得……と言ったところでしょうか……あなたはこれまでに一体"何人"使って試しましたか……?」


「さぁ?……途中から数えるのをやめてしまいましたから……ね」


 かけられた鋭い問いに対しヴァロワレアンは語尾と共に口の両端を三日月のように釣り上げ狂気を孕んだ笑みを浮かべる


 私の背を悪寒が這い上り、脳裏にテレサ=ワーテルスの名が浮かぶ。


 彼女はおそらく13年前にトラードで"それ"を見てしまったのだ……そして、心が壊れてしまった……


 "関わってはいけない"


 "これ以上聞いてはいけない"


 そう私の中の本能が告げている。


「……言っておきますが……私の認識として、あの趣味の悪い造形物は決して"芸術作品"などではありません……」


 少しの静寂を挟みレインフォルトは静かで、かつ冷たい口調で語り始める。


「……異端者狩りと高尚なご趣味に積極的に勤しんでおられたあなたの叔父上には、私がまだ人であった頃に少々世話になりましてね……あの街をターゲットにしたのも都合の良さと腹いせの意味が大きい……それだけのことです」


 多分に皮肉を織り混ぜながらレインフォルトは淡々と言葉を紡ぐ。


「……なるほど……僕が言えたことではないけど、叔父も大概な人だったからね……ああされても致し方ないだろう……だけど、そこを差し引いても貴方の技術は素晴らしい……やはりあれは"芸術作品"ですよ」


 ヴァロワレアンの賛辞にレインフォルトが顔を顰めた時、騒々しい声と音が外から聞こえてくる。


「ご主人様!敵襲です、お逃げくださいっ!!」


 扉を開け放ち、アンナが鋭く告げた。

…………うーん、もっとマイルドにした方が……?


問題点などご指摘いただければ直します……

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― 新着の感想 ―
[一言] え、芸術作品.....なに、なにそれ見せて(血の騒ぎがえげつない 私はここの部の表現が好きですっ! 雰囲気しかないと感じております ダーク売りですもの
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