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屍術医師 レインフォルト 上  作者: 御蛇村 喬
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第五十四幕 取引

センシティブな表現があります。


気分を害する方もいるかもしれません。


しかし、これは人類が長い間犯してきた過ちであり、現在でも闇でこういったことが世界のどこかで形は違えど行われているようです。


これを私は看過は勿論、忘れてもいけないことだと思っております。


世界に真の平等と平和が訪れることを望みます。

「やはり、貴女には紅がよく似合うね……クレア=ブランフォード殿……」


 高く涼やかな声でアルフレッド=レミアル=ヴァロワレアンは私に語りかけて微笑んだ。


「この度は、お助けいただきありがとうございます……」


私は椅子の横に立ち上がり、礼をする。


「まぁ、掛けてくれたまえ……堅苦しい挨拶は苦手でね」


 ヴァロワレアンに促され私はまた椅子に腰掛ける。


「さて、積もる話しもあるが今は目の前の食事を楽しもうじゃないか……」


 ヴァロワレアンの言葉と共にグラスに白い葡萄酒が注がれる。


 ヴァロワレアンはそれを優雅な所作で手に取り、私の方に向けて軽く掲げる。


 私もそれに倣う。


 ヴァロワレアンはグラスの中でワインを転がしてその香りを楽しみ口に流し込み嚥下した。


 私も葡萄酒で口を湿らせる。


 爽やかでフルーティーな香りが口内に広がる。


 次に前菜を口に運ぶ。


 先程の葡萄酒の余韻と相まって魚と野菜の風味が引き立ち、ディルや黒胡椒にレモン……そしてほのかに香るミントが口内を清涼感と共に引き締めて、嫌でも次の料理に期待してしまう。


 その後、料理が変わる毎に葡萄酒も銘柄が変わっていき、そのどの料理も絶品でかつ合わせてサーブされた葡萄酒とも相性抜群。

 

 料理の構成も全て計算し尽くされ、メインディッシュの血の滴るようなレアのステーキで最高潮を迎え、食事の最後を飾るデザートも見た目、味共に文句のつけようがない。


 聖都に来てから強いられてきた粗食に比べたら最早それは天上の食物と言って差し支えない。


 私は食事を堪能し口元を渡されたナプキンで拭いつつ幸せを噛み締めて吐息を吐き出した。


『やれやれ……暢気なことですね……まぁ、私としても堪能させていただきましたがね……』


 レインフォルトの言葉が幸せに水を差してくる。


 しかし、それで私は正気を取り戻し、ナプキンをテーブルに置く。


 ヴァロワレアンは既に食事を終えて寛いでいた。


「……"あの街"で殺されたあなたの部下に黒い肌をした方が居ましたね……彼は何者なのでしょう?」


 私はヴァロワレアンに質問をぶつける。


「ふふ……君はわかってるんじゃないのかな?……まぁ、"需要"があれば"供給"する……それがビジネスというものさ」


 ヴァロワレアンは愉しげにそう答える。


「……アリエラの教えでは、そのような商売を認めていないはずですが……」


 私は声を低くして言葉を紡ぐ。


「そこが狙い目でね……今、帝国内は深刻な"働き手"不足だ……"人"を集めようにも教区か、若しくは屈強な海軍を擁する隣国の海域を経由しないといけないわけだが……隣国の海域はバカ高い通行税を取られるし、教区を通して大っぴらにビジネスをするわけにもいかない……そこで枢機卿たる僕の出番というわけさ」


 ヴァロワレアンは笑みを深め


「この付近には様々な場所に続く地下通路の出入り口が多くてね、枢機卿の権威と地下通路を利用して上手く"人員"の輸送をしているというわけさ」


 私は呆れてしまった。


 こんな男が枢機卿をしているのか……


 アリエラの教えでは奴隷売買を禁じている。


 聖アリエラ教はまつろわぬ民の教えとして長い歴史を持ち、かつては信徒が奴隷として売買されることも珍しくなかった。


 それ故に奴隷制そのものを"神の意に背く蛮行"として禁止している。


 しかしこの男は枢機卿という地位を利用してそれをしているというのだ。


「……さて、君からの質問は以上かな?……僕としても、そろそろ"彼"と話させて欲しいんだけどね……」


 ヴァロワレアンは意味ありげな表情を浮かべそう切り出した。

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