第四十九幕 地下通路
「司教だった僕の叔父の趣味だね……」
誰にともなく呟いて足元に転がっている拷問具をヴァロワレアンは軽くは蹴る。
「さて、先を急ごうか」
ヴァロワレアンは部屋の奥に行き、更なる隠された通路の入り口を開けた。
『やれやれ、エライ目にあったぜ……』
突然聞き慣れない声が私の頭の中で響く。
『漸く帰還ですかサイラス……危うく置いていくところでしたよ』
『悪かったな、格納に梃子摺ったんだよ……"あれ"を失うわけにはいかねぇだろうが』
レインフォルトの皮肉交じりの声にサイラスと呼ばれた聞き慣れない声は不機嫌を露わにして応えた。
荒い口調からあのフレッシュゴーレムとかいう化け物の言葉遣いを想起させた。
サイラスという名は少し前にレインフォルトの口から聞いたことからも、おそらくあの化け物をこの声の主が操っていたのだろう。
聞きたいことは山程あるが、今は抑える。
ここを脱出するのが今の私達が最優先ですべきことだ。
入ってきた入り口を閉めて私達は歩を進めていく。
先頭をヴァロワレアン、私がその後ろ、生き残ったヴァロワレアンの部下2人が私の後ろでやはり光球の術を灯して背後を警戒しつつ暗く狭い通路に幾つもの足音を響かせる。
私は少し休んだとはいえ疲れが取れるには程遠く、鎧を着た鉛のように重い身体を引き摺る。
あまりにも目まぐるしい日だ、疲れた頭で状況を理解するには荷が勝ち過ぎている。
私は思考を放棄してヴァロワレアンの背をただ追った。
しかし、ゆっくりと私の視界は霞んでいき、同時に意識が遠くなっていくのを感じた。
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目を覚ました私が最初に見たのは、見知らぬ天井だった。




