第四十八幕 隠し部屋
物語は最初のシーンの場所へと……
『走りなさい……もう直でしょうからね……』
頭の中でレインフォルトの声が響く。
その声にはどこか憐れみの色が見えた。
その間にも御者は私達との距離を急速に詰めてくる。
後ろの2人が迎え撃とうと立ち止まったその時、こちらに追いつく少し前で御者は突然力尽きたかのように倒れた。
流石にヴァロワレアンも立ち止まり振り向いている。
「な……なんなの……?」
『単純に活動限界ですよ、人間があんな動きで活動し続けられるわけがないでしょう……彼はもう死んだようなものです』
私の問いにレインフォルトは答えて溜息をつく。
私はレインフォルトの言葉の内容をヴァロワレアンに伝える。
「……なるほど、では時間もない……行こうか」
ヴァロワレアンは踵を返して走り始める。
『……渡した技術の中にこういったことが可能になる薬剤のレシピがありましたが、無粋な使い方をしたものですね……』
頭の中で響くレインフォルトの言葉を聞きながら私も走り教会へと急いだ。
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教会に無事着いた私達は奥の隠し部屋をめざす。
一見壁にしか見えない場所にある装飾をヴァロワレアンがいじると、何かしらの音が鳴り壁が押し戸となってひらき、私達は中へと踏み入れる。
先頭を行くヴァロワレアンが詠唱して宙に光球を灯すと、短い階段と通路、そしてその先の扉が照らし出された。
ヴァロワレアンが扉を押し開けると、隠し部屋の内部が照らし出された。
そこには錆びついた拷問具らしき異様な道具が所狭しと壁にかけられている。
部屋の中には夥しい血痕、そして床に幾つかの使われた形跡のある拷問具……
ここで悍ましいことがあったのは疑うべくもなかった。
「司教だった僕の叔父の趣味だね……」
誰にともなく呟いて足元に転がっている拷問具をヴァロワレアンは軽くは蹴る。
「さて、先を急ごう」
ヴァロワレアンは部屋の奥に行き、更なる隠された通路の入り口を開けた。




