第四十五幕 取引
「……お見事です……素晴らしい技術だ……貴方がレインフォルト=アーデルハイムですね?」
拍手が止み、聞き覚えのある高く涼やかな声が仮面の下から奏でられた。
アルフレッド=レミアル=ヴァロワレアン
すぐに仮面の存在の正体に私は思い至った。
「……失礼ですが、どちら様でしょうか?」
レインフォルトは少し面倒そうに仮面を見上げつつ問いを返す。
「おや、もしかしてブランフォード家のお嬢さんかい……?
声音でヴァロワレアンは私だと気づいたようだった。
今、私は兜を被っているから初見では気付かなかったようだ。
『面倒そうなので替わります、敵では無いようですし』
頭に響いたレインフォルトの言葉と共に私に身体の自由が戻る。
私は立ち上がり問いかける。
「ヴァロワレアン卿……ですよね?」
「如何にも」
ヴァロワレアンは応え仮面を少しずらして笑みを見せる。
「私を……保護していただけませんか、私はあなたの欲するものを持ってる」
私は取引を持ちかける。
状況はかなり悪い、教会にはおそらく帰れないだろう、ならば利用できるものは利用しなければ生き残れない。
私の言葉にヴァロワレアンは仮面を付け直し
「ふふふ、貴女の言葉は信用出来そうだ……歓迎いたしましょう、クレア=ブランフォード殿」
ヴァロワレアンの言葉と共に何人かのヴァロワレアンと同じような格好をした人影達が現れる。
『……!、サイラスが突破された?馬鹿な!!?』
その時、レインフォルトの声が大きく私の頭に響いた。




