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屍術医師 レインフォルト 上  作者: 御蛇村 喬
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第四十二幕 潜む者

 時は少し遡る。


 アルフレッド=レミアル=ヴァロワレアンは仮面で顔を隠した集団を率いて急いでいた。


 ヴァロワレアン自身も仮面を被っているため視界は悪いが、そんなことを言っている場合ではない。


 目的地となったトラードの廃墟は既に戦場と化していた。


 降り注ぐ矢の雨が追跡対象の奇妙な荷馬車とその周辺に降り注いでいる。


 ヴァロワレアンが指示を出す。


 仮面の裏にアルフレッドの放つ魔力に反応して7色に光る仕掛けがつけられているため、指示に声を出す必要はない。


 緑が前進、黄色が停止、紫色が潜伏、そして赤が弓での攻撃開始、オレンジが突撃、青色が攻撃止め、そして白が撤退の合図だ。


 全員が止まり、ヴァロワレアンの出した紫色の光の指示に従って朽ちた建物に隠れる。

 

 矢の雨は馬車に執拗に降り注いでいた。


 炎のような揺めく何かも目に入る。


「やれやれ……教会というのもロクでもないな……如何に増長する貴族が気に食わないとはいえ、同じアリエラの教えを仰ぐ者にこの仕打ちか……まぁ、ウィルヘルムらしいといえばらしいがね……」


 ヴァロワレアンは苦笑混じりに呟く。


 あの強硬手段に頼りがちで頭が悪い割に教皇の懐刀を気取って暗躍したがる枢機卿とはずっと以前から反りが合わなかった。


 いつもは温和な表情をしているが、猫を被っているのが丸わかりなのも滑稽だ。


 とりあえず、焦る気持ちを抑えて今は様子を見る他ない。


 ヴァロワレアンは内心で焦りを噛み殺した。

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