第二十七幕 偽り
ヴァロワレアンは言葉と共に狂気を孕んだ笑み見せる。
私の背筋を悪寒が走る。
「彼はレインフォルト=アーデルハイムと名乗り、自らをこの事件の首謀者であり……そして医師と称したそうだよ……」
私は歪なその表情に『ヴァロワレアンに関わらない方がいい』というハーストの言葉を思い出していた。
「……何故……そんなことを私に話すのですか……?」
私はその問いをようやく口に出せた。
「ふふふ、僕は好奇心旺盛でね……純粋に単なる興味さ……と言ったら君は納得してくれるかい……?」
表情から狂気を消してヴァロワレアンはいつもの笑みを浮かべ問いを投げかけてくる。
私は答えずただ視線を鋭くする。
「何にしろ、僕はこの事件と"彼"に興味があるんだ……焦がれるほどに……ね」
ヴァロワレアンは目を細めて笑みを深める
(この男は何か肝心なことを隠している……)
私は確信的にそう思った。
「と、いうわけで僕は情報を集めてる……このことを知った君にも協力願いたいんだよ……この事件の新しい情報が入ったら教えてほしい……調査依頼と言ったところかな……今回の用件はそれだけさ」
ヴァロワレアンはそう告げて右腕を真横に伸ばすと、侍女が素早く帽子を手元に差し出し、それを受け取った彼は再び帽子を被る。
「……今日は会えて楽しかったよクレア=ブランフォード嬢……また逢おう、期待しているよ……では、取れる時間も少なくてね……これで失礼しよう」
その言葉と共に身を翻し3人は去っていく。
その背が見えなくなってどっと疲れを感じて私は一つ息をついた。
「……なんだったのよ……」
私は呟き、とりあえず自分も帰って思考を整理しよう辺りを見回し、私はある重大なことに気づく。
「ここはどこなの……?」
私はその後、この旧市街が迷宮都市と呼ばれる由縁を改めてこの身と心に刻むこととなった。
時はすこし遡る
「おのれ!……おのれヴィンセントめ……儂は教えの頂点、教皇ぞ……その儂に対し皇帝とはいえあのような……!!」
老人の嗄れた怒りの声と机を強く叩く音が蝋燭に照らしだされた薄暗い夜の室内に響く。
「オルフェリアス猊下、お身体に障ります、おやめください!!」
世話役が宥めようと声をかけるが、教皇は心中で荒ぶる怒りの渦を抑えられず体を震わせる。
帝国訪問から帰った教皇オルフェリアスは自室で激昂していた。
昨日書けてましたが、見直しのためこの時間に。
最善というのがあるようでないのが創作の難しく奥深いところですね。
あの表現やっぱり気に入らない、となって直してしまう
(´・ω・`)




