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屍術医師 レインフォルト 上  作者: 御蛇村 喬
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第二十四幕 トラード

少し納得いかない出来……

「……で、"調査"の進捗状況はどうかな?」


 ヴァロワレアンは視線を鋭くして私に問いかけた。


「知っているよ、君が"トラード"の街について調べていることを……ね」


 私は言葉の意図が理解できず困惑する。

 思考がついてこない。


「13年程前に惨劇があった街……といえば分かるかな?」


 その言葉に漸く私は"あの街"に思い当たる。


 ("あの街"は"トラード"という街だったのか……)


 と今更腑に落ちる。


「……なるほど、まだ君は調べ始めたばかりだし、地図からは消されたと聞いたから、トラードの名も知らなかった……といったところかな……」


 ヴァロワレアンはクスクスと笑い


「だけど、テレサに行き着いたのは評価に値するね……悪くないセンスだ……褒めてあげよう……そのご褒美、というわけじゃないけど……教えてあげよう、トラードで何があったのかを……」


 ヴァロワレアンは唇の端をさらに上げ、狂気を感じさせる満面の笑みを浮かべた。


 完全にヴァロワレアンに主導権を握られていることを感じながらも私は黙して言葉を待つ。


「13年ほど前、トラードの街である騒ぎが起こった……街の住人の過半数が突然死したんだ……」


 ヴァロワレアンは笑みを浮かべたまま言葉を連ねていく。


「……無論、連絡を受けた聖都からも伝染病を疑い聖兵団が対処に向かった……こういった実務は彼らの役目だからね」


 実際、教区の治安維持など実質的な諸問題解決にあたるのは聖兵団だ。


「しかし、向かった聖兵団は1人しか還らず、彼はこう言葉を遺して息絶えたそうだ…… 『トラードの街は動く死者で埋め尽くされてしまった』……とね」


 ヴァロワレアンは値踏みするように私の反応を見る。


「そして教会は第二陣……今度は完全武装させた聖兵団を派遣したが、呆気なく返り討ちにあってね……そして、ついに聖騎士団にお鉢が回ってきた……」

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