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屍術医師 レインフォルト 上  作者: 御蛇村 喬
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第二十二幕 修道院

 翌日の早朝、私の足は聖レザントス修道院に向かっていた。


 服装は聖都に来た際に調達したごく普通の服だ。


 部屋着というわけにもいかないし、礼装は目立つし堅苦しい、非番なことを考えても聖騎士団の鎧というわけにもいかない。

 

 こういう時のことを考えてエリスに服を調達してもらっていたのが功を奏した。


 帽子も深めに被り、今の私はどう見てもただの町娘だ。


 私は複雑に入り組んだ道を記憶を辿りながら歩く。


 聖都の旧市街はとにかく複雑で様々な様式の建物が立ち並び雑然としている。


 旧市街というのはここが城塞都市だった頃に築かれた壁の中に広がる古い街並みを指す、今でも壁の名残は聖都のあちこちに見受けられる。


 旧王国時代、この地域は二つの国の国境付近に位置し、二国間の争いに伴い幾度も国境線が書き換えられてきた。


 この街はその都度戦場になり、破壊と構築が繰り返され、この旧市街は戦場になることを前提として二つの国の様式の建物が入り乱れそして入り組んだ造りになっていった。


 ある時旧王国がこの地域を緩衝地帯とするため当時広がっていた聖アリエラ教の聖都にこの街は制定され、国境沿いに教区が設けられた。


 その後はここが戦場になることはなく、複雑な街並みは残された。


 そのため、聖都は別名迷宮都市と呼ばれている。


 その名に恥じぬ複雑さで、私は今でも覚えられず、旧市街を一人で歩く時は緊張する。


 どうにか私は聖レザントス修道院の前に着いた。


 年季の入った門と塀、様式はどうやら異国のもののようだが、ここではよくあることなので特にきには留めない。


 ここではただ用途に向いている建物を使うというのが考え方の基本だ。


 とってつけた感じのする聖アリエラ教に於ける聖獣、雌獅子が鉄の輪を咥えた意匠をしたドアノッカーで扉を叩くと、中から一人の修道女が姿を現す。


「こちらが聖レザントス修道院で間違いないでしょうか?」


私の問いかけに修道女は頷き


「はい、そうです……何か御用でしょうか?」


「こちらの修道長にテレサ=ワーテルスという方についてお話しを伺いたく参った次第です、約束などはないのですが……お取り継ぎいただけないでしょうか?」


 私は返答に胸を撫で下ろしつつ話を切り出す。


「少々お待ちください」


 修道女は恭しく礼をして門を閉じ姿を消す。


 少し待っていると、また同じ修道女が現れ、奥へと案内される。


 狭い庭を通り、建物内へ通される。


 建物内は広く、通路からいくつかの部屋で無心に写本に勤しむ人達のいる部屋や、瞑想をする人達の部屋などを土壁に開いた窓から覗き見ることができた。


 ここは完全な形の修道院、つまり修行の場だ。


 出来るだけ邪魔にならないよう、私は息を殺して修道女の後に続いた。


 通された修道長の部屋は意外と手狭だった。


「ようこそお越しくださいました、私が修道長を務めさせていただいておりますエレナ=オズワルドです」


 老修道女が立ち上がり私を迎える。


「私はクレア……クレア=ブランウェンと申します」


 私は咄嗟に偽名を名乗る。


 クレアという名は比較的よくある名だ、しかし、家名を名乗るのはさすがに気が引けた。


「で、テレサについてお話しをしてほしいとのことですが」


 椅子を勧められ、私が座るとエレナも座り、そう言葉を切り出した。


「はい……こちらにテレサ=ワーテルスという方が居るという話を聞いたのですが……」


 私の言葉にエレナは表情を曇らせる。


「失礼ですがテレサとはどういったご関係でしょうか?」


「……遠縁の親戚になります、聖騎士団の補佐になった彼女が、なぜここにいるのか知りたくて……」


 私は嘘をつくのが苦手だ……心苦しく思うがどうにか言葉を紡ぐ。


「テレサの過去については、当院は感知しておりません…………そういえば……近縁の身内が居ないとのことでしたが、その様子だとご親族にもお話が伝わっていないのでしょうか……」


 エレナは顔を伏せ言葉を切る。


「……テレサ=ワーテルスは10年ほど前に亡くなっております……」


 エレナの言葉が部屋に重く響いた。

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