06
父の訓練は苛烈を極めなかった。あれ?
まだ俺の体が幼いこともあるが、父は俺の年齢にあった訓練を指導してくれる。まだ体が出来ていない俺は、基本は素振りだけだ。幼い子供にとっては反復練習なんてつまらなく、辛い訓練かもしれない。
ただ、男は家の仕事があり、父も農業があるため、訓練時間は短く、基本的に自主練がメインとなる。
まずい、このままだと強くなれない!
焦った俺は、前世の記憶を探る。訓練とは何だったか思い出す……早朝のランニング、暗がりでの筋トレ、内緒で魔物との戦闘……これだ!
知識が漫画なので偏っている気がするが大きな間違いはないだろう。俺は次の日から早朝に起きてランニングを始める。前世の記憶から柔軟も大事だと思い出し、念入りに柔軟も行う。父が仕事をしている間は筋トレだ。知識はあるけどどの筋トレがいいのか分からないので、とりあえず腕立て伏せや腹筋を鍛える。なぜか暗がりでやっている人間の知識が多いので家の中でやる。午後に数時間父親との戦闘訓練をする。訓練が終わると自由時間だ。父は近所の子供と遊んでいると思っているが、俺は魔物を倒すために森へ向かう。
ゲヒャヒャヒャ
ゴブリンだ!
ぐへへへ、俺の経験値にしてやるぜ! ゴブリンに戦いを挑むが、父の言葉をスッカリと忘れていた。人間は、身体強化の魔法を使わないとゴブリンにすら勝てないと。
ボロボロになりながら、どうにか逃げきり涙目になりながら、父から身体強化の魔法を習う。
「身体強化の魔法は体全盛に魔力を行き渡らせることからだよ」
なんだ魔力って
「目を瞑って、体全体に魔力を巡らせるんだ」
うーん、血液みたいなものか? うーんうーんとうなりながら集中する。こればっかりは前世の記憶が一切役に立たない。
「魔法の発動呪文は『強化』」
「え? なんて?」
父の発音が良すぎて何も聞き取れない。
「もう一度言うよ、発動呪文は『強化』」
発音が難しすぎる……
その日なんとか発音できるようになり、これでゴブリンを倒せると満足して寝た。