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 僕の名前はヨーゼフ。ヨーゼフ・フォン・ミュラーだ。ミュラー伯爵の息子になる。


 今回、僕は婚約者であるラインラント伯爵の家に招かれた。婚約者同士の顔合わせをするために。


 正直、この婚約にはあまり乗り気ではなかった。男である僕には婚約をどうこういう資格はなく、口出しはできない。


 それにラインラント伯爵の一人娘は、自由気ままで我儘だと噂もある。


「この婚約は、地盤を固めるうえで大事な婚約だ」


 父がそういって僕を説得する。そういわれても父の野望とか知らないし、興味もない。


 父は男性の地位向上のために動いている人物で、ここでラインラント伯爵と繋がりを持つことで、味方を増やしていきたいそうだ。実際ラインラント伯爵は男性でありながら貴族社会でそれなりの地位を築いている。男性で女性貴族社会と対等に渡り合えるというだけで、どれだけ凄いかが分かるだろう。


ただ、それは大人の話


 僕にとっては、いい迷惑だ。そう思っていた、彼女と会うまでは。


「あら、貴方がワタクシの婚約者候補ですの?」


 一目惚れをした。彼女の見た目に、彼女の性格に、彼女の目つきに。全てに目を奪われる。


「ぼ、僕の名前はヨーゼフ・フォン・ミュラーと言います! どうか僕と結婚してくれませんか!」


 気付いた時にはそう伝えていた。そんな僕の告白にも彼女は柳のように受け流す。


「ふーん……まあ考えておきますわ」


ゾクゾクする。僕にこんな感情があったことに驚く。


 その後、一応婚約の話は進んでいるようだが、彼女から条件が出たそうだ。


「彼女より強い男性……?」


「ああ、それが婚約の条件だそうだ。全く無理を言ってくれる」


 いや、むしろありがたい。確かに高い理想かもしれないが、あれほど美しい彼女ならそれも許されるだろう。それになにより目標を提示されたほうが、目指しやすい。


「父さん」


「ん?」


「僕を鍛えてくれないか! 僕は強くなって彼女にふさわしい男になりたい!」


そう心から願った。


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