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「「――は?」」


 何を言っているのだろう。私の、私たちの怒りが、右腕を斬り飛ばした程度で収まると思っているのだろうか。


 右腕を斬り飛ばした槍を、こちらへ放り投げる。目の前に転がってきた槍は、かなり神聖を帯びている。見た目はただの木で出来た槍だが、恐らくあの偏屈な地の精霊が守っている世界樹でできているだろう。


「「もし右腕だけで気が済まないなら、その槍で左腕も斬り飛ばすといい」」


「「……言われなくても」」


 槍を拾う。彼に向かって数歩、歩き出す。


「「ただもし許してくれるなら、俺の左腕はこれから先、君を抱きしめるためだけに使うと誓おう」」


 ピタリと足が止まる。こいつはこんな状況下で、何を言っているのだろう。そんなセリフで、こちらの動きが止まると思っているのだろうか。


「「何年も一人で過ごして、改めて君の大切さが身に染みたよ。すまなかった、だからこそ、これから俺の隣にずっといて欲しい」」


 今度は、彼がこちらに近づいてくる。分かっている、今ここで彼の右腕を斬り飛ばせば、彼は今後きっと私に執着しなくなる。何年も前に彼に怒り、そして別れを告げた。そしてここで最後の縁が切れる。


清々する。


いいじゃないか、もう彼のことは。


今もこうして人間に加護を与えて、それなりに楽しく過ごしている。


だからここで槍を振るって、彼の右腕を斬り飛ばせばいい。


ただそれだけなのに、体が動かない。


 彼の左腕が、私を包み込む。


「愛しているよ、セイレーン。これからは一緒に過ごそう」


 彼は、私に語り掛ける。


「……私は、とても嫉妬深いわ」


「知っている。それも含めて君の魅力だよ」


「……私はきっと、あなたを束縛するわ」


「歓迎するよ。愛されていると実感できる」


「……ずっとずっと、私だけを見てくれないと私は怒るわ」


「ああ、わかってるよ。これからずっと君のことを見続けるよ。俺のこと、許してくれるかい?」


「……それは、これからの行動次第ね」


 彼女から、精霊の気配が薄れていく。目の前には力を使い果たして、倒れこみそうになっている彼女だけが、俺の腕の中にいた。

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