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「これは、別にわざとではありませんよ!」
必至に否定することで、なぜか逆に照れてしまう。意識していなかったのに、彼に言われたことで多少意識をしてしまう。なんか右手で攻撃し難くなった。
(くっ! これが彼からの精神攻撃だとすれば、なかなかいい手ですね!)
精神的には、どちらもダメージを負った。
右手の鱗を意識してしまい、攻撃回数が減った気さえする。ああ、だめだ。意識すればするほどドツボにハマる。
(それもこれも、あのドラゴンのせいです!)
にっくきドラゴン。やはり彼との戦いが終わったら、個人的に討伐にしいくべきか悩む。
一旦気持ちをリセットするため、彼との距離を置く。幸いなことに彼からの攻撃は、今のところ有効打はない。人形に多少傷はついたが、もう人形が傷つけられて気持ちも動転しなくなった。
「ふう……」
彼の攻撃は確かに、珍しいものだ。手だけドラゴンになっている人間も初めて見た。だが、そこまで。攻撃方法も、今までみてきたドラゴンと大差もない。これならば、全然戦える。
「さて、新しい技というのは以上でしょうか」
正直、この程度であれば、以前の彼の方が強かったのではないか。そう思ってしまう。
「ああ、実は一回しか使えない大技がある」
「……へぇ」
そんな、弱点を晒すようなことを言っていいのだろうか。一回しかないなら、その一回を避けてしまえばいい。
「出し惜しみするものでもないからな。さあ、いくぞ……!」
彼が大きく息を吸う。大きく、大きく、大きく。
「まさか!」
まさかその動作は、ドラゴンのブレス!?
確かにその攻撃は、今までに何度も見てきた。ドラゴンはブレスを吐く。だが本来、生物の肺や構造はそんなものを吐ける構造をしていない。魔法か、ドラゴン固有の技か。そのあたりの解明は未だ進んでいない。
だからこそ、人間にはブレスを吐くことが出来ない。
(だめ! まともに食らったら、あの時の二の舞になる)
決して、そのブレスは食らってはいけない。
だが彼は言っていた。一回しか使えないと。
だから避けないと。たったその一回を避けるだけでいい。
「だけどそれでは……」
折角の、未知の魔法を体験できる機会を見逃してしまうこと。
「ガアアアアアアアアア!」
私は、彼のブレスをまともに食らった。




