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30

 彼がこの場を去ってギルド内がザワザワしだす。


「クラウディア様、やつを調子に乗せてはいけません! なぜ道をお譲りになられたのですか」


「あらだって、彼面白そうじゃない」


 そう本当に彼は何かやってくれそうな気がする。この街は少し停滞してしまっている。最近では強者もあまり出ず、外の魔物も脅威が少なくだらけた雰囲気がある。

 ギルド内を見渡すと昼間から酒を飲むやつもいる。はあ、同じ女として本当に恥ずかしい。


「それにだったら、貴方が勝負を挑んで屈服させればよろしいので?」


「い、いえ私は……」


 彼との門前での戦闘を見て、彼女たちはビビッてしまっていた。あのなりふり構わない捨て身な攻撃に、自分可愛さに、このだらけ切った街の中で戦いを挑むものはいない。


嘆かわしい、女のプライドはどこにいったのか。


「ですがそもそもああいった粗暴な感じは男らしくない。男は家にこもって家事をしていればいいものを」


 それでもなお、こうして陰口を言うのだから、本当に一度彼と戦ってみるのも一ついい手かもしれない。それにしても彼は一体何者なのかしら。あら、よく考えると名前すら知らないわ。


◇◇


 近くの森で猪を狩る。狩る。狩る。こいつら多すぎ!

 思ったより連続戦闘を強いられ気が滅入る。これでこの辺で弱いほうなのか……街はレベルがたけーな、おい。


 とりあえず3匹狩り終えたので、持ち上げる。おもっ! おいこれ効率悪いぞ。必死に猪を運び門前のおっちゃんに預ける。1匹1シルバー程度らしい。1シルバーってどれくらいの価値だよ。

 おっちゃんに話を聞くと、宿に泊まるのに大体3~5シルバー程度必要らしい。素泊まりで。これあと2往復はしないといけないのか……


 狩り自体はそこまで大変ではない。ただ持ち運びが大変なのだ。そのことをおっちゃんに話すとリヤカーを貸してくれた。報酬は猪一匹だ。


「ほいっと」

 

 合計で6匹狩り終えた。猪は基本直線の移動しかしない。これ下手したらゴブリンより弱いんじゃ……


ドスッ


 大きな足音が聞こえる。


「あ――」


やべ、トロールだ。


 そのトロールは身の丈3mはありそうだ。右手には俺の腰くらいの太さがある棍棒を抱えている。腕も太く、醜悪な容姿でこちらを見ている。おいこいつ、まさか俺の猪を奪おうとしてんのか。


どうする。逃げろと言われてたが……


 正直この猪6匹は持って帰りたい。そんな欲が出てしまい逃げるのが遅れる。そのすきをついてトロールが攻撃を仕掛けてくる。

 その大振りな一撃は大地にたたきつけられた。風圧が凄く、地面が抉られる。うん、これ一発で死ぬやつだ。身体強化してても危ういかもしれない。


「このっ!」


 大振りで隙が出来たところに攻撃を仕掛ける。頭は届かん、足だ足。狙うはアキレス腱!

 ピッと綺麗に切れる。やはりどんな生物でもここは強化できないようだ。トロールは攻撃してきたこちらを向き、追いかけようとする。そしてこける。


アキレス腱切れてるんだ、そりゃ歩けるわけないだろ!


 こいつあれだ、知性ないやつだ。そうと分かれば簡単だ。少し遠目から石を飛ばしてればいい。あれ、思ったより生命力あるな。それから20個は石を当て続けてようやく動きが止まる。良かった、ダメージが入ってて。

 ついでに倒したトロールも荷台に積み、街へ持って帰る。


「お、おい! こいつはトロールか!」


「ああ、襲ってきたから倒した」


「お、おうお前。実は強かったのか」


「いや? 雑魚だったぞ」


「こいつを雑魚と呼べるのは都市の一部上位冒険者だぞ」


いや本当に雑魚だったよ?

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