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魔王城。


 かつて奥地まで行った冒険者から、位置の情報だけは知られている。


前線都市の更に奥。


 この辺は、人間の領域には出てこない魔物や、強敵とされる魔物が普通に出てくる。


 今も、二体のブリーラー・レッスルが行く手を阻んでいた。


 如何に精鋭といえど、苦戦を強いられる。


「エッダ様、被害は一名です」


「そうですか……」


 この後の魔王との戦いに備えてエッダは、なるべく戦闘に参加せずに体力と魔力を温存している。そのせいもあって、少しずつローレライのメンバーにも被害が出始めている。


(まだつかないのでしょうか……)


 最近、急成長をしているヴィルマを置いてきたのは失敗だった。彼女は今、実家に帰っており、シューベルトの家族を逃がしているそうだ。


 もし今回の一連の事件が彼の仕業だと、全世界に公表されたとき、関係ないとはいえ、彼の家族も無事では済まないだろう。それを懸念して彼女は今、地元に帰っている。


 今回の情報は、極限られた人間にのみ公表されており、彼女には私から直接伝えた。


 少なからず動揺はしていたが、彼の奇天烈な行動には慣れていると言って、彼女は一旦地元に帰っていった。


 そうして少しずつ被害を出し、少しずつ彼女も戦闘に参加するようになって、ようやく魔王城が見えてくる。


「あれが……」


魔王城。


 石で出来た城は、見た目は堅牢だが、所々崩れ落ちており古城といった雰囲気だ。ここまで攻め込まれることを想定している感じではなく、かつて城だったものをそのまま使っている。


「今回の目的は魔王の顔を見ることです。魔王が出てきたら一当たりして退却します」


 魔王の討伐までは考えない。


 それをするには戦力が足りない。


 出来ることなら魔王に傷を与え、少しでも人間の領域への侵攻を遅らせたい。


「では、いきましょう」


 そうして、彼女は魔王城へ乗り込んだ。

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