249
「我々の作戦はあくまで陽動だ」
現場を仕切るのは、ゴブリン担当のアルノーだ。
アルノーと比べて、明らかに実力で勝る人物は多い。今まで、前線で戦ってきていたものもいる。それなのに場を仕切るのが彼なのは、付き合いが長いという理由だけではない。
「アイン、ツヴァイ、ドライ」
「はっ、ここに」
この三体のゴブリンは、恐れ多くも王から直々に名前を与えられた三体だ。あれからこの三体もスクスクと成長し、今では並ぶものがいないほどの実力者として成長した。彼らに指導を受けた者や、彼らから生まれた新しいゴブリンは通常個体とは違い、明らかに戦闘に特化した個体として生まれてくる。
アルノーは、彼らを三原種と呼ぶ。彼ら原種から育ったものはそれぞれ魔法、戦闘、暗殺に特化して育つ。
こちらの部隊の多くがゴブリンで占める。だからこそ現場の指揮は、アルノーが執るのが一番効率が良い。
「アルノー、これもお願い」
そういって、荷物を預けてきた後方のフェンリルの上で居眠りをしている彼女。彼女たちが、そういった指揮をとることが面倒だと思っているわけではないと思いたい。
「敵戦力はどうか」
今回、情報収集面で少しだけ苦労している。それも戦力を分けたため、王の傍に優秀なゴブリンを何体か送っているためだ。
「こちらより少し多いかと……」
戦力でも強い人間側が、防衛で、人数も有利。そんな状況で攻め込んでも恐らく落とすことはできないだろう。
今までのゴブリン部隊の使い方は、主に突撃。それを今回変える。
「ゴブリン戦闘部隊に、弓を持たせろ。接敵は控えつつ、敵が出てくれば森まで引き込んで叩くぞ」
森の中まで引き込めれば、数の利は多少抑えられる。数を減らしながらも、少しずつ戦果を出し始めた。




