表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

251/334

241

世界樹の意思。


 私は、今まで自分は比較的、輝かしい人生を送っていたと思っている。幼少期より魔力操作の才能があり、めきめきと頭角を現す。四芳姿に入り、様々な問題も解決してきた。人並みに恋だってした。


 だけど、今こうして話を聞いていると、私の周りではもっと色々なことが起きていたらしい。


(私の知らないことが、私の周りで沢山起きている)


 こうして彼と一緒に旅ができ、知識や視野が広がったことは幸運だった。様々な経験はまた一つ、私を成長させてくれた。


それなのに。


「カサンドラ。悪いけど、ここで死んでもらう」


「……え?」


 彼の言葉が、理解できなかった。最近、私たちを悩ませていた魔物の大暴走を先導している。彼はまるで、私がその事実を知っているかのように話す。


「俺の敵は人間。強大な敵は、人類最強の女のマリだ」


 彼が、一体なにを考え、何を思ってそう決めたのかは知らない。だが、そんな事実は知りたくなかった。


 私はきっと、彼に憧れ、だけど恋を叶わず、そして誰かと結婚して、それなりに幸せな人生を歩む。


 そんな、他人事のように自分の人生が進んでいくと考えていた。だから、こうして彼から敵対宣言をされたことに、少なからず衝撃を受けた。


「……避けられないんだね」


「ああ」


覚悟を決める。


 彼の意思は固い。なら、今私にできることは、彼を力づくで止めることだけ。


「いいよ、相手してあげる」


「すまんな」


 謝罪なんていらない。本当に欲しいのは、そんな言葉ではなかった。


 もし私がもっと素直になって、気持ちを伝えていたらこんな未来にはならなかったのかな。そんなことを思う。


 そういえばエッダが彼の事を花で例えていたことを思い出す。


「我が名は四芳姿のカサンドラ! 魔物を統べる者よ、貴方を倒し、その野望を止めてみせる!」


 本当の気持ちを隠し、私は彼に宣言する。


「ブバルディアの花よ。我が想い、受け取って貰うぞ!」


落花流水の情


 その前口上の意味は、誤解されることなく彼に伝わった。だからこそ彼も、紳士に彼女へ返答する。


「悪いが、その想いには応えることができない。ここで死んでもらおうか、四芳姿のカサンドラ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ