219
「ふむ、貴方が相手ですか」
彼女は銃を下ろし、地面に放り投げ剣を抜く。
「貴方が相手でしたら、剣でお相手するのが礼儀でしょう」
「……感謝する」
確かに、先ほどの剣での死闘は壮絶だった。彼女からすると、あの剣技がとても神聖なものに感じたのだろう。騎士の矜持か何か分からないが、こちらにとっては都合がいい。
そして彼は言っていた。属性魔法を使えと。私はまだ、属性魔法を使えたことはない。
(手本は、目の前にいる)
目の前で行われている、魔力操作を真似すればいい。凡才の私には、それを一度見ただけで真似するのは、かなり難しいかもしれない。幸運なことに剣での打ち合いは、相手との力量が同じだと長くなるため、今の状況は私にとって好ましい。
剣の打ち合いがされるたび、私の集中力が増していく気がする。少しずつ思い出すのは、かつてダークエルフの村での最後の戦い。
「さすが、やりますね!」
「はっ! はっ! はっ!」
相手が、何か言っているが集中しているため、頭に入ってこない。
(後少し、後少し……!)
もうすぐ、次のステージにいける気がする。しかし、その一歩が果てしなく遠い。目の前の動きを真似る。中々、その魔力操作を真似することができない。
見る。
真似する。
それを繰り返す。
「はっ! はっ! はっ!」
「くっ!」
一度剣を振るたびに、攻撃の鋭さが増していく。もとより剣術だけなら、私は目の前の女性より優れている。時間が経ち、魔力操作のコツをつかみ始めれば、おのずと力量差が出始める。
そして、私の武器は短剣だ。
「このっ!」
目の前で、20回も見本を見せてくれたのだ。
「あっ――!」
私も、ようやく彼の領域に少しだけ手が届いた。
「【紫電一閃双】」
私の二本の短剣が、目の前の彼女を斬り割いた。




