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私は考える。どうすればこの状況を打破できるかを。


 目の前にいるのは、何を勘違いしたのか私の体を赤く染めるゴブリンと、そのゴブリンの上役であろう人間の男だった。もう一人の男は、私のトラウマを呼び覚ました右手を持っているため、少しだけ苦手だ。


(この異様な光景を報告しないと……)


 今、魔物の領域ではおかしいことが起きている。私が浅学なだけで、普段からこういったことが行われている可能性があるが、人間と魔物が共闘している事実を、早く伝えないといけない。


(そのためには、まずこの拘束から抜け出さないと……)


 このゴブリンは、話が通じる気がしない。なんとか、この人間の男を抱き込まないと。そう思い、人間の男を観察する。


「情報を吐かせるには、やはり拷問か、強姦か……」


 なにか、物騒なことを言っている。このまま赤く染められるだけならいいが、ゴブリンに強姦なんてされた日には、本当に殺された方がマシだろう。状況が悪い方向に行く前に、こちらで修正しないといけない。


「な、なあ。そこの男性よ」


「……僕ですか?」


「ああそうだ、あんただ。なあ、この拘束を解いてくれねぇか。実は、さっきからトイレに行きたくてな」


「……その状態のまますればいいだろ」


な! なんてやろうだ!


 男は、まるで汚物を見るような目でこちらを見下ろす。


「た、頼むよ。なんならそうだ! 私の体を、少しくらい好きにしてもいいからさ!」


「あぁ? チッ、舐めてんのかテメェ。テメェの体を借りなきゃいけないほど、僕は困ってねぇんだよ!」


やばい、説得の方法を間違えただろうか。


「な、なに怒ってるんだよ。別に2~3人くらい囲ったって問題ねぇだろ?」


「なにを――」


 そう言いかけて、男が言い淀む。


「……確かに。王は、何人もの女を囲んでいるな。強い男は、そういうものか……?」


「あ、ああそうだ! 強い男ってのは、何人も女を囲うもんだ! そうだろ?」


 なにか、いい感じに勘違いをしてくれたらしい。このまま乗せて、なんとか拘束を解いてもらおう。そんな打算すら生まれてくる。


男が複数の女を囲うだ? ふざけた野郎だ。


 もし複数の異性を囲えるなら、私だってやっている。常識的に考えてそんなこと許されるはずがないが、ここには魔物の常識があるのかもしれない。人間とは違う文化があれば、それはここの常識となる。


「なに言ってんだい。ゴブリンのアルノー」


 そこに、待ったをかけるように現れたのは、人間の女だった。


「そんなの、王だから許されてるだけだぜ。普通の男は、複数の女を囲ったりはしねぇし、そんな余裕はないぜ。それに、目的はその女から情報を抜き取ることだろ、論点が変わってるぜ」


「……ああ、そうだった。すまないな、ロリコンの女」


「……その名前で、呼ぶんじゃないよ」


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