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 俺は、久々に拠点へ戻ってくることができた。妹が終始、腰に抱き着き「目を覚ましてください~!」と、泣きながら歩く邪魔をしてきたため、少し時間がかかった。


 拠点へ戻ると、他の建物より少し立派な見た目をした建物に案内される。室内は広く、一段高い位置には少し豪華そうな椅子がある。


「王よ、あちらへ」


 椅子に座る。一段下に立つ部下たちを見ると、本当に偉くなった気分にすらなる。


「王よ、王がいない間のご報告をさせていただきたい」


 場を仕切るのは、ゴブリン担当のアルノーだ。彼は最近、拠点の全体の管理もしているらしく、大分成長した。人間的にも大きく成長した彼は、もう現場を一人で任せて問題ないほどだ。立場が人を成長させるとはよく言ったものだ。


「ああ、聞こうか」


 俺も、それっぽく答える。ふむ、この椅子に座っていると本当に王になったような気分になれる。


「はっ、では私から……」


 そうして、不在時の状況を細かく聞いていき今後の方針を示しておく。いい感じに戦力が増えていることに満足する。


「それで王よ……その王の隣に立つ人物は一体」


 俺が王の椅子に座った時に、なぜか自然と少し後ろのポジションに立った、ヴァン神族のグルヴェイグ。人間と、同じ立ち位置が嫌なのかと思って放っておいた。


「ああ、彼女は――」


「妻です」


「きさまあああああああああああ!」


 妹が吠える。このやり取りは、帰り道に散々聞いた。


「おお、王よ。おめでとうございます」


「おめでとー」


 ゴブリン担当のアルノーと、盗賊団の女頭領が祝う。


「なら、私にも妾のチャンスが……」


 ダークエルフのジルヴィアは、一人で何かボソボソと呟いている。妹とグルヴェイグは、まだ喧嘩をしている。


「グルヴェイグ、俺はまだ状況が落ち着くまで妻を貰うつもりはない」


 グルヴェイグは、この世界に来てから居なかったタイプの女性だ。だからこそ、魅力も感じるし少なからず好意を頂いている。恐らく、呪術の影響も少し受けているのだろう。半分ドラゴン、半分人間のため、そこまで深くかかっている感じはしないが。


 だからこそじっくり考えて、お互いのことを知ってからどうするか決めたい。そう思い声をかける。


「わかっております。今は、ですね。今は」


「……ああ」


「お兄様! こんな女捨てて、私と結婚しましょう!」


 兄を取られるのが、そんなに嫌なのか妹がずっと必死だ。残念だが、家族で結婚はできないんだ。すまんな妹よ。


「もう私、魔物なので結婚できますよ!」


「道徳的にどうなんだ、それ」


 種族が変わっても家族だと思っていたのだが、妹の考え方は少し違うのだろうか。少しだけ寂しい気持ちになった。

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