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(どんなにやる気があっても勝たなきゃダメだ)


 残念なことにダークエルフの女性は、そこまで強くなかった。必死に戦っているが、力量差が見える。


「雑魚がぁぁぁぁ! 粋がるなよぉぉ!」


「クッ!」


 まぁ、いいか。なんか俺に恐れをなして勝手に傘下に収まってくれるらしいし、俺に損はないだろう。視線を外す。周りの他のダークエルフは何を考えてこの戦いを見ているのだろう。


「え」


 誰が言ったか、戸惑いの声があがる。戦いに改めて目を向け、その女性を見る。


笑って――


……いつだったか、俺も戦ってるときに笑っていた。あれは確か、斬りあえば斬りあうほど、自分の成長を感じていた時だったか。


 彼女は今、自分が急成長していることが楽しいのだろう。


「……魔力にイメージを乗せてみろ」


「!」


 そういえば最近、強い敵と戦い過ぎて当たり前になってたが、魔力を込めて戦うのは難しい。余計なアドバイスだったか。


「ハッ! ハッ! ハッ!」


「調子に、のるなぁぁ!!」


 思ったよりも、ダークエルフの男もやる。この村で一番強い、というのも嘘ではなかったのかもしれない。


(どうする。男も思ったよりやる、仲間にする価値があるかもしれない。だがここで止めれば、折角ダークエルフの女性の成長が止まってしまうかもしれない)


 どちらを取るか、そんな風に考えている時に、先ほどよりも少しだけ大きい地震が来る。


(おっ)


 結構揺れたな、地震大国日本に住んでる俺でも、結構揺れたと思うくらいの揺れ。流石の二人も手を止め、こちらを見ている。先ほどまでの緊張感は切れ、二人とも肩で息をしている。


「はぁ……二人ともそこまでだ」


 成長の機会が止まってしまったのは残念だが、いい拾い物をした。

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