161:女頭領の過去
私は元々、ローレライに所属していた。
ローレライには、いくつかの兵科がある。
歩兵は、戦闘の花形とされ魔物との戦闘は勿論、前面に出て市民の目に触れる機会も多くある。いわゆる市民の憧れの職業というやつだ。
工兵は、主に戦闘を行うことはなく、基地や駐屯地などの設営や、作戦に必要な道路や場所の設営、修繕を担当する。あまりパッとしない部署だが自分の仕事にプライドを持っている人間が多く、職人といったイメージが強い。
そして諜報部。諜報部では魔物の動向や行動原理などは勿論、人間内部の情報を集めることもある。貴族の汚職などもそこに含まれている。
きっと私は、そんな人間の闇ばかり見ていて疲れていたのだろう。仕事以外の時間に癒しを求めるのは自然のことだったのだと思う。
もともと、子供は嫌いではなかった。たまたま調べていた貴族がそういった趣味で、孤児ばかり集め、好き放題やっているという情報を手に入れた。
当時は憤っていた。
未来ある子供を、まるで自分の所有物かのように集め、私欲のために市民の税金を使っている。許せなかった。
貴族の館に押し入り、子供を助けた。そこまでは良かった。
「ありがとう、お姉さん!」
その瞬間、心を撃ち抜かれた。
人間の闇の部分ばかり見ていた自分には、子供の純真さが突き刺さる。それから自然と街中でも子供を目で追うようになっていく。いい仕事についているため給料が高く、そして私は独身のため自由に使えるお金も多かった。趣味も特になくお金も溜まっていく一方だ。
だから買ってしまった。後悔はしていない。
結局そういった行動がバレ、ローレライを退職することになった。その後もいくつかの問題がバレ、追われる身となる。
今までは、ローレライ側も本気で追ってくることはなかったため油断をしていた。それもそのはずで、元ローレライのメンバーが問題を起こしていたなど、世間体がとても良くない。暗殺などしたら、メンバーからの反感も出る。だからといって、内部情報を持っている私は手放しで放っておくこともできない。そんな絶妙な立ち位置でのらりくらりとやっていた。
それも限界がきた。子供に手を出したあたりから、あちらも本気を出してきたのだ。ローレライの諜報部の実力は知っていたはずなのに、なぜかバレないと思ってやってしまった。後悔はしていない。
そして今、私は、魔物の領域で自分の趣味を謳歌している。
そして、私は思う。法に縛られない生活、最高だと。




