138:炎の精霊
『ふんふん、面白い運命に巻き込まれてるねぇ』
炎の精霊は、こちらをのぞき込むようにして見ていた。何が分かったのだろうか。
『君の心臓は、前世の呪縛に囚われいる。まるで呪いのようだ。これまで、数多くの苦難と女難にあってきたみたいだね』
おい、今までの不幸って前世悪いことをしたせいなのか。
『まあ、それも大分薄れてきてはいるね。今世では、善行を積んだのかな?』
そんなことよりも、いくつか聞きたいことがある。
『構わないよ。いくらでも聞いてくれ』
まず、何で種族ごとに精霊が分かれているんだ。
『正確にいうと分かれたが正しいね。昔はみんな、仲良しにやっていたんだ』
なんで分かれたんだ?
『いやぁ、僕がつい浮気をしてしまってね。それで怒ったセイレーンと仲違いしてね、今まだ絶賛喧嘩中なんだ。もう何百年、会ってないかな』
そんな理由で……
『そのせいで、セイレーンは男嫌いになってしまってね。いやぁ人間の男には悪いことをしたと思ってるよ。ははは、ごめんごめん』
……まぁ、それはもういい。それよりも、俺はあんたの加護は受けれないのか。
『それは難しいね。君は既に、セイレーンの加護を受けている状態だ。新しく加護を受けたいなら、それこそ生まれ変わらないと無理だね』
そうか。なら俺が【魔物として生まれ変わったら】加護が貰えるってことでいいんだな。
『そうだね』
一つ、提案がある。
『なんだい、人間の男』
俺が、水のセイレーンと対話する状況を一時的に作ってやる。だからあんたから、上にいる魔王に俺を魔物にすることを頼んでくれないか。
『残念だけど、セイレーンは出てこないよ。前に声をかけたことがあったんだけど、無視されちゃったんだ』
俺なら、それが出来るかもしれない。
『へぇ、どうやって?』
簡単だ。レベル10の人間を、戦場まで引きずり降ろせばいい。そこで『精霊降ろし』を使わせれば、水の精霊を呼び出すことができる。
『……おもしろそうだ。いいよ、魔王には声をかけておこう』
助かるよ。




