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参ったな……
まさか最強の女が、前世の嫁だとは。
「……今は、シューベルトと名乗っている」
「それでいえば私はマリです。覚えておいて下さいね」
「……なあ、あの時は――」
「私は強くなりました」
喋り出すタイミングが重なり、出鼻を挫かれる。
「……」
「この世界に来て私は恵まれて、ドンドン強くなれました。それこそ、この世界で最強と言われるほどに」
「……ああ」
「だから……あの時よりも強くなった私を、あなたにお見せしたいと思います!」
戦いは唐突に始まった。しかしそれは、戦いとは呼べるようなものではなかった。一方的な虐殺。体に傷がドンドンと増え、治療をした箇所からも再度血が流れ始める。まるで今まで貯めてきた鬱憤を晴らすかのように、何度も何度も執拗に攻撃が繰り出される。
圧倒的レベル差。
圧倒的力量差。
それによって増えていく傷跡。
そして何より。
「どうして抵抗しないのですか?」
俺が攻撃に対して無抵抗のため、俺の体にはドンドンと傷跡が増えていく。
「……俺が、あの時したことは許されることではないかもしれない」
「――そうです。私がどれだけ貴方の事を愛して、貴方のために尽くして、貴方のために――」
「だけど、これだけは言わせて欲しい。あの時はすまなかった……」
「……そんな、いまさら。今更謝らないでください!!」
「それも含めてすまない。俺は――」
「うるさい!! うるさい、うるさい、うるさい!!!」
彼女は怒鳴り、こちらの言葉を遮る。
「もういいです、そんな言葉も聞きたくない。私たちはこの世界に生まれ変わって、そしてここで出会った。その運命が示す答えは一つです、ここで私たちが殺し合いをすること。それがこの世界に生まれ変わった、私たちの運命です」
「……」
「見せてあげます。私が最強と呼ばれる理由を、最強だからこそ使える技を――」
彼女は攻撃を一時辞め、詠唱をする。
『精霊降ろし(Geist)』




