第八章 明子、逆襲される
自衛隊では、各種訓練を中止して対応した。
「これは訓練ではない。総理大臣の指示だ。抵抗する者は急所をはずして容赦なく銃撃しろ。総理大臣が危険だと判断された。即銃撃しないと、こっちがやられるぞ。」と指示して、日本全国の天龍会に向かって出動した。
自衛隊の動きは早く、各天龍会の事務所が自衛隊に取り押さえられた。
天龍会は警察ではなく自衛隊が来たので偽物だと判断して抵抗すると、警告もなく急所を外して、威嚇射撃しないで突然自動小銃で、腕や足や肩などを銃撃された。
天龍会は自衛隊に連行されたので本物だと納得した。
天龍会会長は幹部から報告を受けていた。
「すべての支部は、自衛隊に壊滅させられました。抵抗すれば銃撃されて負傷者多数。死人もでています。けん銃を発砲して抵抗した会員がハチの巣にされて死亡しています。武装している自衛隊相手ではどうにもなりません。天龍会は終わりです。」と報告した。
会長は地雷を踏んでしまったと、総理大臣直属の秘書を狙った事を後悔していた。
マスコミは、「総理大臣直属の秘書を二名も襲って、総理大臣の業務に支障がでてきたために、国家反逆罪として自衛隊を動かして天龍会を一網打尽にした。この危機的状況を、第一秘書の小川啓子氏の活躍で無事乗り越えた。」と日本を動かした女性として報道された。
総理官邸内部でも、この緊急時に焦らず笑顔で冷静に小川啓子氏直属の秘書を使って対応していた。フランス大統領が彼女を懐刀として採用したいと言っていた事が理解できるよと、啓子の噂で持ち切りだった。
たまたま総理官邸を訪れていた大日本電気の社員がこの噂を聞いて、帰社後上司に報告した。
この報告を聞いた重役たちは、啓子の事を掲載している週刊誌を見ながら、こんな優秀な女性を解雇してしまった事を改めて後悔していた。
オッチョコチョイの啓子はそんな状態になっているとも知らずに、連続ドラマが見たくて、早く仕事を終わらせて帰ろうとして、仕事を一般の秘書に振っていたために、混乱もせずに業務の遂行ができたようでした。
早く帰ろうとしている事を悟られないように、笑顔で対応していたために、落ち着いて他の秘書に仕事を振り分けて冷静に仕事を遂行しているように見えたようでした。
業務が問題なく遂行できたのは、一部の秘書が自衛隊を出動させた様子を見て早とちりして、日本は大変な状態だと噂していただけで、実際はいつもと変りなかったからでした。
ただ、今回の件で自衛隊を動かしたのは、やりすぎだ。自衛隊の私物化だと報道したマスコミもいた。
政治家のドンといわれている実力者、井辻文雄も、「秋山君、私が反対したにも関わらず自衛隊を動かすとは前代未聞じゃないか!何を考えているのだ!一部のマスコミも騒いでいる。どうするつもりだ!」と反対したにも関わらず自衛隊を動かしたので、自分が無視されたようで激怒していた。
それに気付いた亮太が現状把握しようとしていろいろと調べていた。
その後、秋山総理大臣の支持率が低下した。
その後の警察の捜査で、天龍会は以前、陽子が壊滅させた国際的なテロ組織の一味だと思わせて、すべての大臣を同時に襲って内閣を壊滅させて、混乱している間に銀行などを襲って略奪を計画していた事が判明した。
秋山総理大臣が自衛隊を動かさなければ、その二日後に日本は大混乱していた事が判明した。
その発表に合わせて海上保安庁が、「現在も北朝鮮の工作船が多数日本への侵入を試みています。全て海上保安庁が阻止しましたが、日本が混乱して海上保安庁も混乱すれば、侵入を阻止できずにチャンスだと判断して多数の北朝鮮兵士が日本へ侵入し、我が国の各拠点や自衛隊基地を破壊した上で、今度は工作船ではなく、北朝鮮の軍艦が日本へ攻め込んでくる可能性がありました。」と発表した。
秋山総理大臣が自衛隊を動かさなければ、日本はウクライナのように戦争状態になり大変な事になっていた。
このような状況になっている事を正確に把握し、自衛隊を動かしたのは正解でした。決して自衛隊を私物化していない。以前、週刊誌に掲載されていたように、やはり日本を任せられるのはこの人しかいないとの意見が大半を占めて、秋山総理大臣の支持率も回復して、その後、支持率も上昇した。
自衛隊を動かす事に反対していた政治家のドン文雄は、亮太が動いて北朝鮮のスパイで秋山総理大臣の動きを封じようとしていたが、秋山総理大臣には敵わなかったとの噂が広まった。
その噂で政治家のドン文雄は、「そんなバカな。いままで災害以外で自衛隊を動かした事がないので心配して忠告しただけだ。」と反論したが、やがて失脚した。
秋山総理大臣の支持率が低下した時に、タイミングよく警察と海上保安庁が発表した裏で亮太が動いていた事は誰も知らなかった。
文雄は腹の虫がおさまらず、まるで私が悪人みたいじゃないかと復讐しようとしていた。
政治家だった頃に手なずけていたやくざに指示して、秋山総理大臣と亮太を狙っていた。
文雄は失脚したので亮太も油断していて狙われている事に気付かなかった。
秋山総理大臣と亮太の行動を調べて、大型トラックで二人の車に高速で激突した。
二人とも意識不明の重体になった。
新しい総理大臣が選出される事になった。
文雄は外部から政治家だった頃の腹心、田川敦が総理大臣になるように画策していた。
やがて敦が総理大臣に選出された。
泉達直属の秘書は退職した。
泉の発案で、一家全員東京を離れて休養する事になった。
東京を離れられない一部のお手伝いさんは解雇したが、それ以外は啓子も含めてついてきた。
秋山家が所有している軽井沢の別荘に引っ越した。
その数か月後、北朝鮮の小型潜水艦が日本海沿岸で乗り捨てられている事が判明した。
警察が捜査したが、乗組員は発見できなかった。
更に、秋山元総理大臣と亮太を襲ったやくざが逮捕され、政治家のドン文雄の指示だと判明して逮捕された。
この事がマスコミで発表されて、政治家のドンの腹心が総理大臣になっていると世間は知った。
総理大臣の支持率が低下して、自衛隊の弾薬倉庫などで爆発事故が続いた。
潜水艦で侵入した北朝鮮のスパイの仕業だとの噂が広まった。
マスコミがこの噂を報道して、秋山元総理大臣だったらこんな事にはならなかった。やはり日本を任せられるのはこの人しかいない。このままだと北朝鮮が攻めてきて日本はウクライナのようになる。と報道した。
この報道で日本国民は不安になり秋山元総理大臣を捜したが引っ越していた。
秋山家では、亮太と元総理の体調が戻るまでどうにもならないのでひっそりとしていた。
一方萌子たちも相変わらず、表の顔はヒーローだが、裏の顔は謎のスケバングループでした。
ただ今までと異なるのは、生徒会長の米田仁が謎のスケバングループの正体を知っている事でした。
生徒会では、仁が謎のスケバングループの調査をしなくなったので不審に思っている生徒もいた。
そんな中、謎のスケバングループがやりたい放題で暴れていた。
生徒会では、みんなが帰った後に仁が萌子に電話して、「萌子さん、謎のスケバングループもちょっとやりすぎですよ。もっと抑えて頂けませんか?」と会話していた。
ちょうどその時、忘れ物を取りに戻った、生徒会副会長の小原明美さんがその会話を聞いて、生徒会室に飛び込んできた。
「米田さん、最近謎のスケバングループの調査をしないと思ったら、正体を知っていたのですか?誰と話をしていたのですか?携帯見せてください、発信履歴を確認させてください。」と迫った。
仁は慌てて電話を切って、「それはプライバシーの侵害です。」と慌てて逃げるように退室した。
萌子は、その状況を察して生徒会室に向かった。
途中で鉢合わせした。
私は、「ちょっと、二人で何もめているの?」と間に入った。
明子は、「ちょっと萌子さん、聞いてくれる?米田君、謎のスケバングループのリーダーが誰なのか知っているのよ。どう思う?」と私に意見を求めた。
「それなら私も知っているわよ。知らないのは小原さんだけじゃないの?行きましょう、米田さん。」と仁を連れて行った。
一人残された明子は呆然とした。
翌日、生徒会で明子は問題提起した。
確認すると、誰も謎のスケバングループのリーダーの事は知らなかった。
仁は、明子たちから問い詰められた。
「謎のスケバングループのメンバーについては知らない。リーダーを知っているだけだ。そのリーダーの交友関係から、メンバーの見当はついている。思いもよらない人物だから誰も気付かないんだ。」と論点をぼかしてごまかそうとしていた。
明子は、「能書きはいいから誰なの?」と迫った。
仁は諦めて、「萌子さんが何故スケバングループのリーダーを知っているのか不審に感じませんでしたか?」とヒントを与えた。
「だから、能書きは・・・・」
「本人だからですよ。萌子さんが謎のスケバングループのリーダーですよ。」とやむを得ず正体を明かした。
「えっ!?嘘。」と驚いた様子でした。
「メンバーを確認するために、萌子さんと仲のいい親友の事を調べると、昔は手の付けられない不良少女でした。その不良少女を、萌子さんが金銭と親の権力で操っていました。どうされますか?彼女らは、わが校のヒーローで全校生徒が味方ですよ。」と明子の出方を窺っていた。
明子は、「えっ!?それは本当ですか?わかりました。しばらく私に時間をください。私が調査します。」とその議題は終わらせたものの、どうしようかと困っていた。
明子は、謎のスケバングループのメンバーと思われる人物のなかで、ひときわ目立つ康子の様子を窺っていた。
放課後、康子が恐喝していたので声をかけた。
「康子さん、せっかく萌子さんと勉強会をして成績も上がったのに何しているの?ヒーローの正体がばれるわよ。」と恐喝しないように促した。
康子は、「厚化粧しているのに、なぜ私だとわかるの?」と不思議そうでした。
「生徒会を甘く見ないで。謎のスケバングループのメンバーは把握したわ。萌子さんにいうわよ。」と睨んだ。
そこへ仁がきて、「明子さん、手を引いて下さい。明子さんこそ、謎のスケバングループを甘く見ないでください。わが校の不良グループが謎のスケバングループに手を出して壊滅した事を忘れたのですか?」と明子を引っ張って行った。
明子は、「邪魔しないで!メンバーに・・」
仁は、「今萌子さんと話をしてきました。生徒会で説明したように、萌子さんは金銭と親の権力でスケバングループを動かしています。メンバーは元々手の付けられない不良少女だったと説明したでしょう。メンバーは短気で暴走すると萌子さんでも止められない事があるそうです。メンバーを刺激しないでください。」と無茶しないように説得していた。
萌子は万が一、自分たちの行動が表面化して問題になった時に、あいつらが勝手にやった事で私も止められなかったと逃げられるように手を打っておいたのでした。
康子から報告を受けた私はメンバーにラインで、「明子は目障りだから少し脅かすわよ。確か駐輪場には防犯カメラがあったわよね。配下のスケバンに目出し帽をかぶらせて、明子の自転車のワイヤーを切らせて。その時間に私たちは明子を囲んで脅すわよ。いわゆるアリバイね。」と指示した。
明子は下校時、ブレーキが利かずにカーブが曲がり切れず田んぼに突っ込んだ。
田んぼだったので大きなけがはしなかった。
明子が自転車を調べると、ワイヤーが切断されていた。
明子は殺されそうになったと警察に通報した。
近くの交番から巡査が来た。
自転車を確認してワイヤーが切断されている事を確認して本署に報告した。
鑑識が確認して人為的に切断されたと判断した。
殺人未遂事件として捜査が開始された。
警察が捜査して、謎のスケバングループにはアリバイがあったので容疑者から外れた。
仁は明子に、「明子さんが萌子さんを問い詰めている様子が何度か目撃されています。萌子さんは、わが校のヒーローで全校生徒が味方だと忠告したでしょう。熱狂的なファンの仕業の可能性があります。明子さんは全校生徒を敵に回してしまったようですね。しばらくおとなしくしていないと、取り返しのつかない事になりますよ。」と警告した。
その話を聞いていたのでラインでメンバーに説明して、「これでしばらくは明子もおとなしくなるでしょう。」と安心させた。
里子が、「みんなが恐喝していたのでヒーローはお金に困っていると寄付が寄せられているわ。私たちは何もしなくてもみんなが助けてくれるわ。」とおとなしくしているように忠告した。
私たちはこのあと、お金に困る事もなく穏やかに生活して、大日本女子大に進学した。
私たちは相変わらずつるんでいた。
そんなある日、近くに刑事がいる事に気付いた。
康子が、「私たちはまだ見張られているの?今は陽子さんがいないから心配だわ。」と不安そうでした。
里子が、「大丈夫ですよ。あいつは少年課の刑事でしょう?もう関係ないわ。もし私たちに手をだしたら、リーダーの父親が警察に圧力をかけてくれるわよね。」と私をみた。
全員納得して警察は気にしなかった。
次回投稿予定日は、6月20日を予定しています。