きっかけ
雨はまだ止む気配はなく
私はそのまま常連さんを眺めていた。
「ドッカーン」
お店は雷の音とともに暗くなった。
思わず「キャー」声を出してしまった
「大丈夫?」
「大丈夫です。少しびっくりしてしまってすみません」
「多分近くに落ちたんだね!俺もびっくりしたよ」
薄暗くなった店内
声のする方に目を向けると近寄ってくる
大きくてすらっとした優しい香りのするいつもの常連さん。
「ただいま先程の雷でお店が停電してしまいました。申し訳ありませんが灯りが着くまでそのままで少々お待ちください。」
「停電しちゃったかー凄い音だったもんね!俺びっくりしすぎてコーヒーこぼしちゃったよ」
気さくに声をかけてくれた常連さん。
「お洋服大丈夫でした?よかったらこれ使って下さい」
私はたまたま持っていたハンカチを手渡した。
「ありがとう。でもコーヒーだから汚れちゃうから
俺の服なんて安物だから」
と返された。そしてつづけて
「いつもの店員さんだよね?」と話かけてくれた。
「気づいてもらえてたんですか!」
「分かるよ、いつも君の笑顔に癒されてるよ」
急にそんな事を言われ私は何を言えばいいのか
顔は赤面で頭の中が真っ白になった。
「でも本当今日は災難だなー、今日俺ついてないんだ!」
「何かあったんですか?」
「大した事ないんだけどね!生きてると色々
あるよねー」
いきなり深い話、、、
私は少しびびってしまった。
(ピカン)
店内に灯りが付いた。
「大変お騒がせ致しました。灯りがつきましたので
引き続きごゆっくりお過ごし下さいませ。」
店長の声が店内に響いた、、
隣を見ると常連さんが目の前に居た。
「やっとついたね、雨も少し止んだみたいだ。」
私の顔は赤いまま目の前にしてより赤くなった
「失礼します」
私は逃げるようにお店を出た
こんな顔が熱いままじゃ恥ずかしくて
見ているだけで良かったのに
こんな近くで話せる日がくるなんて
誰も居ない道をスキップをしながら帰った。