七話 新戦力
戦争続きで疲弊していたベッジハード帝國は、お世辞にも内情がいいとは言い難かった。
武力統一の弊害として、反乱が頻繁に起こっていたのだ。ナイトメアやマックスがすぐさま平定に行くが、安定した生活とは程遠い。エースは民達に早く安定した生活をさせてやりたいと思っていた。
そこで、出自、家柄を問わずして、大々的な人材募集を掲げた。人材が多くいれば、反乱の平定も行いやすい。
かなりの人数が集まった。やはり、出自、家柄を問わないというのが大きい。街で殺し屋をやっていた者。盗賊団を率いていた者。みすぼらしい格好をしているが、聡明で未来への活力が溢れている者など、とにかく色んな者が集まった。
エースは即戦力になりそうな者だけを選ぼうとしたがナイトメアは違った。
「即戦力になりそうな者だけを選んで、未来活躍するかもしれない者の機会を奪うつもりか?」
「ではどうするのですか?未来ある者かどうかはわからない。それに、人材育成をするにあたってもそんな余裕が今あるとは到底思えないのですが?」
「私が直々に魔法学校を作り、この者達を育てる。即戦力になる者は取り立て、才がありそうなものは私が面倒を見れば良い」
「成る程、では魔法学校建設に関してはあなたに任せますよ」
「分かった、受け持とう」
そうしてナイトメアは魔法学校建設に取り組んだ。
ベッジハードは広い。一つ建てるだけでは到底足りない。結局20個ほどの学校を作り上げ、戦士育成の場とした。
のちに、ベッジハードを支えることになる者達がこの学校から多く輩出されることになる。
結局、エースの判断基準ではあれだけの人数が仕官したにもかかわらず、登用に至ったのは数名程度であった。厳しすぎるのではないか?ナイトメアはそう思ったが、エースの判断にケチをつける気はないし、学校から人材はどんどん派遣できる。
ナイトメアは登用された者達と面会した。その時、登用された者達の面構えを見て戦慄を覚えた。登用されたのは5名であったが、その5名とも見ただけで強いことがわかる。エースの目は確かだ。ナイトメアは直感的にそう思った。
「俺はロイス・スプリガンと言う。貴殿がナイトメア殿か、噂は俺の住んでる町にも伝わっておる。俺は妖怪を操ることができる。役に立つぞ」
「妖怪?なんだそれは?」
ナイトメアは首を傾げた。
「おっと失敬、妖怪は私の母国にしか生息しない魔物とでも思ってくれ」
「そうか...宜しくな」
絶対それだけの力ではないだろう。ナイトメアはそう思いつつも固い握手を交わす。
「私はアン・アンドレアス。盗賊団の頭領をやってた。この、メアリーと一緒にね。私達には仕事がなくて、盗賊をやるしか道はなかったけど、どうせなら国のためにと思って、メアリーと一緒に志願したの。私は月が出ている間に限るけど、闇の力を消滅させることができるわ。貴方にとっては天敵かもしれないけど、きっと役に立てると思うわ」
「メアリー・リードと言います...よ....よろしくお願いします」
メアリーは少々怯えているようだったが、アンはこれから始まる新しい生活に期待を膨らませていたようだった。ナイトメアは元盗賊を信用していいのかと思いつつ2人を歓迎した。
「次は俺の番か?俺はキーゼル・ヴァレンタイン。魂を奪い取って、そのエネルギーを得ることができる。俺は地下街でずっと殺し合いをしてきた。サシでやるなら誰にも負けねえ。お前にすら負けることはないと思うぜ?一丁やってみるか?」
身の程知らずの上不躾なやつだ。ナイトメアは不快に思ったが、後1人で終わりだ。そう思うようにして、さっさと終わらせようとする。
「最後は僕ですね。僕はフラッシュ・ライトニング。光の速さで動けるし、光も操れる。僕は貴族の嫡子だったけど、貴族の世界に嫌気がさして、自分で訓練して仕官しにきたんだ。よろしくお願いしますね、ナイトメア様」
ようやく終わった。ナイトメアは思念体であるにもかかわらず、背中が汗でぐっしょり濡れているような感覚に襲われていた。それほどまでに緊張感の漂う会談だった。
「皆、これからベッジハードに尽くしてくれ。よろしく頼むぞ」
「はっ!」
形式的な挨拶をしてナイトメアは別れる。
面会を終えたナイトメアはどっと疲れていた。あのような者達の相手は少々堪えるものがあった。心強い味方ではあるが、曲者達である。
7話「新戦力」をお読み頂き誠に有難う御座いました。
どうもLASTDAY作者の杉田健壱楼です。
そして数ある作品からこの作品を選び見たくだっさて再三御礼申し上げます。有難う御座いました。
今後も応援の程宜しくお願いしますʅ(◞‿◟)ʃ