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LASTDAY  作者: 杉田健壱楼
三章 大陸大戦
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八十五話 謎

 どうしたものか、とイーブルは悩んだ。当然、地鳴りのおかげで、ナイトメアらベッジハードの援軍が来たことはわかっている。しかし、目の前の敵は、戦いをやめてはくれてくれなかった。


「これ以上戦うのは時間の無駄だ」

「黙りなさい!あなたを倒すまで、私はここを立ち去りませんよ」

「...これ以上相手にしていられん」


 イーブルは、ダミアンに背を向けて逃げ出した。


「ハッ、戦士の誇りもないのですね。敵に背中を向けて逃げ出すとは」


 ダミアンは、嘲りながらイーブルを追う。イーブルは、ベッジハードの援軍と、ミコル兵とが混戦している丘目掛けて走り続けた。

 

「誰だ!?貴様は!」


 ミコル兵と戦っていたジャックが声を荒げた。


「イーブル・クロック。時間がないんだ。通してくれないか」

「あんたがなんでこんなところに?」

「説明している暇は...」


 イーブルとジャックが言い合っている間に、ダミアンが追いついてしまった。


「逃げるとは卑怯な男ですね」

「戦略的撤退、というやつだ」

「なんだ、あんた逃げてきたってわけか」


 ジャックが意地悪そうに言った。口角が不自然に上がっている。


「そういうわけだ。あとは頼んでいいな?」

「おう任せろ。敗将の手は借りずとも良い」

「そいつは死なんぞ?」

「そんな生命体がいるわけないだろう」


 ジャックには話を聞く気がなかった。それをイーブルも察したのか、すぐにその場を走り去る。


「待ちなさい!我が神を愚弄したことを許したわけでは...」


 追おうとするダミアンを、ジャックは一刀にして斬り伏せた。


「俺の目の前を堂々と通り過ぎることができると思うなよ...狂信者共が」


 二つに割れた胴体の顔が笑っていたことに、ジャックは気が付かなかった。



 イーブルは、名もなき砦に急いだ。しかし、砦にはタチャンカと見慣れない女が1人いるだけであった。


「キングダムはどうした?」

「イーブルか。一応、礼は言っておこうか。ガンツとマックスを助けたらしいからな」

「当然のことだ。ここの砦の守りはいいのか?」

「ああ、今ナイトメアたちが敵の掃討に向かっている。時間の問題だ」


 イーブルはふと、女の方を見やった。目があったことに気づいたのか、女の方から喋りかけてきた。


「あんたがイーブルか。初めて見たけど、あんまり強そうじゃないね」

「私は武官ではないからな」


 イーブルは短く答えた。


「へえ。じゃ、女の私にも負けるかもしれないのか?」

「貴女が武官であるなら。名をなんと?」

「イルゼ・フィーナ」


 2人は少しだけ睨み合ったが、すぐにタチャンカによって止められた。


「よせ。一応は恩人だ。戦力を削ぐのも好ましくはない」


 イーブルは目線を和らげた。


「フッ。柄にもなかったな。女性に対して失礼な言動をした。陳謝する」

「へえ...」


 イルゼはしたり顔で引き下がった。


「今は、掃討作戦。と言ったところか」

「その通り。コルットラーの領土から異物を除外する作業だ。なんの問題もありはしない」


 タチャンカは大義そうにイーブルに言いおいた。イーブルはそのタチャンカをしげしげと見やる。いぶかしんだタチャンカは、思いついたように声を荒げた。


「ここでの戦いは混戦だったようだが、周りの様子に変化はなかったか!?」

「さあな...周りなど、見る暇もないほどの混戦だった。ガンツやマックスはここでの戦いの記憶がないだろうし、全てを見渡せたのはキングダムだけか...と言っても、怪我人2人を守っていたのだから、意識は散漫になっていてもおかしくはない」


 イーブルはなんということはなさそうにとそう答えた。途端、タチャンカの顔が青ざめる。


「今すぐにナイトメアを引き換えさせろ!イルゼ!」

「はあ?なんで」

「今すぐにだ!!!残党狩り、侵攻作戦を中止して全速力でリベルン砦に戻るぞ!!!」


 イルゼは訳がわかっていないようだった。仰々しくイーブルがそれに答える。


「リベルン砦への奇襲攻撃。今頃はリベルン砦が陥落し、コルットラー兵及び駐屯していた我が軍隊も全滅...」

「それはここが落ちてないんだからありえないんじゃ...」

「それは砦が普段通りであったら。混戦状態では、そうだな...空でも飛ばれたら、わからないな」


 イルゼは真っ青になってナイトメアに思念交信メッセージを送った。


「ナイトメア!今すぐ兵士を率いて帰ってきな!」

「何故、貴様に命令されなきゃなんねーんだよ」

「タチャンカの指令だ!さっさと戻ってこい!」

「おい、イルゼ!どういうことだ!」


 ナイトメアがそう言った時には、もう思念交信メッセージは切れていた。


「はぁ...せっかく雑魚狩りを楽しんでいたというのに...だが、タチャンカがそう言うと言うことは、残党狩りよりも重大なことが起こったのか...」


 ナイトメアはそう考え、すぐさま兵を率いて砦へと引き返そうとした。

ご覧頂き、誠に有難う御座います。


今後もご愛読の程、よろしくお願いします。

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