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LASTDAY  作者: 杉田健壱楼
一章 戦乱の世
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六話 新たなる脅威

 星帝戦争が終わり、世の中に平和が訪れた…わけではない。星帝戦争が思った以上に長引いたため、その間に巨大な勢力がまたできていたのだ。



「ハッハッハッ!!私にも天運が向いてきたな。ベッジハードが北に兵を向けたおかげでこちらはまだ弱小勢力が乱立しておる。私の時代が到来したか...」


 この不気味な男はカムイ・エアハルトという。


 カムイは、勢力を拡大するために行動を開始する。


 しかし、陰険な性格のため、アルバートのように人望を持って勢力を拡大することはできない。また、実力もそこまであるわけではなかった。


 そこで、カムイは自分の技術スキル、記憶改変を使い、近くの小国の指導者を洗脳し自分の配下とした。


 その後、洗脳した優秀な配下を使い南に巨大な王国を築いた。神聖シュライド王国という国の誕生である。


「エカテリーナ!酒を注げ!今日もお前で楽しませてもらうぞ!」


そうしてカムイは、酒と女に浸る贅沢で怠惰な日々を過ごし始めたのである。



 ベッジハード帝國側としては、シュライド王国の存在は無視できなかった。しかし、武力で制圧するのも現段階では不可能であった。メテオとの戦いで消耗しているからだ。


 それに、エースの方針も武力統一から和平へと切り替わりつつあった。それは狂神五人衆達が重傷を負って帰ってきたからである。戦争は悲しみしか生まない。そう思うようになっていた。


 早速、エースはシュライドに和平の使者を送った。しかし、戻ってきた使者は最悪の結果を持って帰ってきた。



「大変です!シュライドが戦争を仕掛けにきました!」

「何ですって!?」


 エースは驚いた。まさか、和平の使者を送っただけで戦争を仕掛けられるとは思ってもみなかったのである。


 実はシュライド王国にはこんな一枚の手紙が届いていた。


「ベッジハードに従属せよ」


「なんだと!?ふざけているのかこの国は!ハンニボル、オリジン!こうなれば全面戦争だ!」


 カムイは当然怒り心頭である。


「オリジンだけで行った方が賢明かと思われます。これがべッジハードの挑発で、背後から回り込んで刺そうとしている可能性や他の国のなりすましである可能性も考えられます。国防は万全を期した状態にしておいた方が良いでしょう」


 冷静な判断を下すのはハンニボルと呼ばれた、黒い服を全身に纏う威厳のある男性である。


「んーもう何でもいい!適当に引き連れて早く叩きに行くぞ!!」


 しかし、エース達はそんな事情を知らない。


 なんとか兵を引いてもらいたいが、ベッジハードの内情はぐちゃぐちゃだ。逃げたドラゴンも追わねばならない。そんな事情を説明しても攻めやすいと判断されて、兵を引くどころかより進軍速度を上げられてしまう。


 参ったエースはメテオ側に援軍を求めた。メテオ側は快く援軍に応じた。


 エースは一安心して、ナイトメアを国防軍大将に任命。援軍が来るのを待つような作戦、すなわち持久戦の形を取るように命じる。


 しかし、待てど暮らせど援軍はやってこない。



 ナイトメアは痺れを切らしていた。援軍は来ない。敵はもう眼前に迫っている。


「メテオは何をやっているのだ!!」


 激怒するナイトメアをタチャンカがなだめる


「何か事情があるのだろう。怒ってもしょうがない、国の危機だ。とりあえず我らだけで迎え撃つしかあるまい」

「事情があるにしても何か一報を入れるべきだろう...」


 ナイトメアは援軍が来ないことになおも不満を募らせていたが、敵はもうすぐそこまで迫っている。戦うしかなかった。



 カムイは、国防軍の数が少ないのをみてせせら笑った。


「ハッハッハッ、この程度の兵で何ができるか。オリジン、やってしまえ!!」

「御意」


 オリジンというのは、南の地方領主で最も強かった者である。カムイによって記憶を書き換えられ、今はカムイの下についてしまっているが、元は高潔な騎士でもあった。


 オリジンの指示でシュライド軍が動き出す。それと同時にナイトメアも仕掛けていた。


 戦闘が始まった時、ナイトメアは前線に押し出ていた。


 血の女王で、カムイを殺す気なのだ。カムイさえ殺せば南の地方の安定は保てない。そうなれば、南側の地方の制圧に手間がかからない、そう考えたのだ。


 率先して突撃するナイトメアの前に、オリジンが立ちはだかった。



「カムイ様には指一本とて触れさせん!!」

「哀れな...血の女王(ブラッドクイーン)!!」


 これでオリジンは死んだ。ナイトメアはそう思ったが、オリジンはピンピンしている。


「な....まさか....血の女王(ブラッドクィーン)が....」


 オリジンは自身の固有技術、技術破壊スキルブレイクにより、血の女王(ブラッドクィーン)を完全に破壊していた。


「どうした?お前はこれしか芸当がないのか?」


 ナイトメアは焦った。此奴との戦いでは技術を使えない。技術を使えなければ戦況の打開などは無理である。ナイトメアは矛たる血の女王(ブラットクィーン)を失い、オリジンとの一騎打ちでは劣勢に立たされていた。


 しかし、全体的に見ればナイトメアは有利に戦いを進めていた。タチャンカの策をよく聞いていたからである。タチャンカの仕掛けた落とし穴に敵がどんどん落ちていく。落とし穴を避けて行動しようとすれば、火矢が飛んでくる。元々油を撒いていたため、火の周りは早い。逃げゆくシュライド軍を待ってましたとばかりに伏兵のヤマトが狙い撃つ。勝敗は、ほぼ決していた。


 オリジンは少々残念そうに言った。


「どうやらここまでのようだ...お前とまた再戦できる日を望んでいるぞ、さらばだ」



 真っ白の服で一際目立つオリジンが殿しんがりとなってシュライド軍は撤退して行く。ナイトメアは追撃したかったが、余力がなかった。


 結局戦に勝ちはしたものの、ナイトメアの怒りはおさまらなかった。すぐさまイーブルに会いにいく。


「なぜ援軍を出さなかった!お前が援軍を出さなかったせいで私は血の女王(ブラッドクィーン)を失ってしまった。お前のせいでベッジハードは弱体化してしまったのだぞ!」

「それは気の毒なことだが、私はちゃんと援軍を出したぞ?ただ、向かう途中で魔物の群れに襲われている村を発見したらしくてな。そこの救援に先に行っていたのだ。それからでも援軍は間に合うと思ってな。思った以上に戦争が早く終わってしまって、間に合わなかったのは申し訳ない」


 イーブルの反論はナイトメアをより怒らせることとなった。


「人間の住む村など放っておけばよかっただろう!国と村、どちらが大事なのだ!!」


 イーブルは目を細めた。


「次から援軍を送るときはそうしよう」

「ああそうしてくれ!今後こういうことがあれば問答無用で貴様らとの同盟を切る!」


 怒りながら出て行くナイトメアをイーブルは冷たい目で睨んでいた。

LASTDAY6話「新たなる脅威」を読んで頂き誠に有難う御座います。今後も精進して頑張りますので宜しくお願いします。

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